筆者の友人C子の話です。
小1から教科書の余白を絵で埋め続ける息子に、担任から「授業に集中できていない」と何度か言われたことがありました。やめさせるべきか——でも夢中で描く息子の顔が忘れられず、強く言い切れないまま過ごしていました。そして小2の秋、担任に呼び出されて覚悟して向かった先に待っていたのは、思いがけない言葉でした。

「実は、すごく気になっていたんです。この絵、見てください」

身構える私に、先生が優しく指差したのは、教科書の片隅に描かれた小さなキャラクターたち。
「構図といい、線の細かさといい、只者じゃないと思って。この集中力と表現力、ぜひ伸ばしてあげたいです」
予想していなかった言葉に、私は胸がいっぱいになり、返す言葉が見つかりませんでした。

止めなくて、よかった

担任の先生の勧めで、その年の絵画コンクールに出品することになりました。
息子が描いた作品は見事、表彰を受けることに。連絡を受けた時、思わず涙が出ました。
「あのとき、息子の『好き』を頭ごなしに否定しなくて本当によかった」と。

それを機に、息子にスケッチブックを渡しました。
「学校の教科書はみんなで勉強する大切なものだから、これからはこのノートに思いっきり描こうね」
息子は目を輝かせました。小3になった今では、授業もしっかり受けつつ、家に帰ると毎日夢中でスケッチブックに絵を描き続けています。

正解はわからないけれど

学校という集団生活のルールを守ることと、子どもの個性を引き出すこと。そのバランスに悩む親御さんは多いのではないでしょうか。
私も、何が正解かは今でも模索中です。

でも子どもが夢中になっているものを、まずは大人が受け止めてあげること。
頭ごなしに否定しなかったこと。
その選択が、一つの才能を守ることにつながったのかもしれません。
先生の温かい視線と、息子のまっすぐな情熱が、親として見守ることの大切さを教えてくれました。

【体験者:30代・女性・主婦、回答時期:2026年5月】

※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

※本記事内の画像はイメージです。実在の人物・製品・ブランドとは関係ありません。

FTNコラムニスト:K.Matsubara
15年間、保育士として200組以上の親子と向き合ってきた経験を持つ専業主婦ライター。日々の連絡帳やお便りを通して培った、情景が浮かぶ文章を得意としている。
子育てや保育の現場で見てきたリアルな声、そして自身や友人知人の経験をもとに、同じように悩んだり感じたりする人々に寄り添う記事を執筆中。ママ友との関係や日々の暮らしに関するテーマも得意。読者に共感と小さなヒントを届けられるよう、心を込めて言葉を紡いでいる。

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