私は娘の小学校で、図書ボランティアをしています。集まりの中で、なぜか印象に残る静かなママがいました。特別、気に留めていたわけではありません。けれど、あるできごとを境に、その存在感の理由に気づかされたのです。

ある瞬間、変わった印象

ところが、ある日の読み聞かせで、その印象は一気にひっくり返されました。そのママが生徒の前に立ち、本を開いた瞬間、教室の空気がピタッと止まったのです。

声は澄んでいて美しく、登場人物ごとに話し方が自然と変わります。子どもたちは一斉に前のめりになり、私はその見事な表現力に圧倒され、内心失礼ながら「えっ、同じ人!?」と驚いてしまいました。

それからというもの、その方が読み手の日が妙に気になるようになりました。予定表を確認しては、「今日はあの人かな」と思い、気づけば自分からボランティアに足を運んでいます。

いつの間にか私も、子どものように彼女の読み聞かせに惹きつけられていたのです。

ボランティアをする理由

特に忘れられないのは、3年生に向けた戦争を題材にした読み聞かせです。少し重たい内容にもかかわらず、教室は最後まで静まり返っていました。読み終えたあと、女の子が何人もそっと涙をぬぐっている姿を見て、胸がいっぱいになりました。

あの時間を見て、ようやく腑に落ちました。このママは、話すことや目立つことのためではなく、物語を通して子どもたちの心に何かを届けたくて、ここに立っているのだと。

普段の控えめな姿勢も、すべては物語を主役にするためのものだったのかもしれない。そう気づいたとき、彼女が読み聞かせを続ける理由が、すべて一本につながった気がしました。今では、そのママの読み聞かせの日を、私も楽しみにしています。

【体験者:40代・筆者、回答時期:2025年12月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

FTNコラムニスト:大空琉菜
受付職を経て、出産を機に「子どもをそばで見守りながら働ける仕事」を模索しライターに転身。 暮らしや思考の整理に関するKindle書籍を4冊出版し、Amazon新着ランキング累計21部門で1位に輝く実績を持つ。 取材や自身の経験をもとに、読者に「自分にもできそう」と前向きになれる記事を執筆。 得意分野は、片づけ、ライフスタイル、子育て、メンタルケアなど。Xでも情報発信中。

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