装う意味を改めて問う「ドレスコード?-着る人たちのゲーム」展

画像: 装う意味を改めて問う「ドレスコード?-着る人たちのゲーム」展

本来、ソーシャルな場での服装の規定を指す言葉だった「ドレス・コード」。その解釈がSNSの発達と共に広がり、今では同じ時間・空間を共有し、その中でファッションをより楽しむキーワードと捉えられている。今、その意味が変化しつつある「ドレス・コード」という言葉を通し、装うことの意味をあらためて問いかける展覧会が開催されている。展示されているのは、主催者であるKCIが収蔵する18世紀から現代までの衣装約90点のほか、現代美術作品、映画ポスター、漫画、劇団によるインスタレーション作品など多岐に渡り、13のキーワードに基づいた構成で装うことの意味を紐解く。私達は、今日着ている服に、どんな「ドレス・コード」を自ら課したのか?普段意識することのない日常の選択を通し、新たな気づきをもたらす展覧会だ。世界でも貴重なアーカイブたちを、その目で確かめてみては。

展覧会の魅力を現地からリポート!

【ミケランジェロ・ピストレット≪ぼろきれのビーナス≫1967年豊田市美術館蔵】山積みされた服の前にビーなうが立つ作品は、サステナビリティ(持続可能)やエシカル(倫理的)を問われている現代のファッション業界を予兆していると言えよう

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【ハンス・エイケルブーム≪フォト・ノート1992~2019≫作家蔵】同じ日時・場所で、通行人の服装を撮り、類型学的に分類した写真プロジェクト。似た服の人がこんなに通るとは・・・意外な実態を知る96の作品。

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【ズート・スーツ 1940~42年 ロサンジェルス・カウンティ美術館蔵】会場に入ると、ドレス・コードの象徴と言えるスーツが20体並ぶ。その中で存在感を放つのが、このズート・スーツ。当時異端だったフォルムが、後に新たなスーツスタイルを生んだ興味深い作品。

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【ドレス(ローブ・ア・ラ・フランセーズ)1770年代後半KCI蔵】後ろにはこのドレスを身につけた、坂本眞一作『伊野さん Rouge ルージュ』のマリー・アントワネット。実物と並べてこそ理解できる精妙かつ迫力のあるガ力に時間を忘れて見入ってしまう。

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【グッチ/アレッサンドロ・ミケーレ 2018年秋冬 KCI蔵】スーパーリミックスな作品が並ぶ「誰もがファッショナブルである?」のエリア。その服は本当にファッショナブルなの?それは誰が決めたの?そこにあなたの意思はあるの?そんな問いが聞こえてきそう。

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キュレーターに聞く「ドレス・コード?」展の見どころ

画像: キュレーターに聞く「ドレス・コード?」展の見どころ

衣装を観るだけでなく、ファッションを感じて欲しい

Q.「キュレーター」の仕事とは?
A. 美術館や博物館の学芸員と同じで、KCIが所蔵する約1万3000点の衣装や2万点の文献を管理・調査・研究すると同時に、それを今回のような展覧会等を通じて皆さんに知って頂くことが仕事です。展覧会を開催する場合は、企画立案・交渉・構成・カタログ制作・宣伝活動など始めから終わりまですべてに関わります。今回の「ドレス・コード?」展はチームで運営しており、私を含め3人のキュレーターが、企画に関わっています。

Q.[ドレス・コード」をテーマとしたきっかけは?
A. 通常、ファッションをテーマとする展覧会は、その歴史やデザイナーのクリエイティビティを軸とするものがほとんどですふぁ、「着る人・着る側の実践」にフォーカスした展覧会を催したいと思い、3年以上前から準備を進めてきました。服にはデザイナーの意図があり、装いには目に見えない様々なルールがありますが、それを守る人もいれば破る人もいる。さらには、着る人によってルールが変わる場合もあり、それがファッションの面白さを生みます。そんな社会とのつながりをかんがえるきっかけにもなる装いのルールを「ドレス・コード」という言葉で表現しました。

Q.サブタイトルに「着る人たちのゲーム」とした理由は?
A.「ゲーム」という言葉には、遊び・競技・勝負などの意味がありますが、すべて何かしらのルールのもとに進行し、プレイヤーと観客が存在します。ファッションも同じで、装う事を楽しむ人、ルールを無視して冒険する人(プレイヤー)、それを応援する人、冷静な目で視る人(観客)がいて、地域によってルールが違うこともあれば、プレイヤーと観客が入れ替わることもある。それらすべてがファッションとの共通項と捉え、「着る人たちのゲーム」としました。

Q.坂本眞一氏の漫画『イノサン』『イノサン Rouge ルージュ』とのコラボは画期的ですね。
A.これらはフランス革命(1789年)前夜のフランスを舞台にした漫画。同時代のKCI所蔵品を着用した登場人物を書き下ろして頂き、約2mの大作になりました。KCIの所蔵品は人が着用することができませんが、「意思を持つ誰かに着せて息を吹き込みたい」という夢があり、今回魅力的な漫画のキャラクターを通してそれが叶いました。実物の衣装と並べて展示していますので、その細かいディテール描写にも注目して下さい。

Q.一番のおすすめポイントは?
A.ファッション好きな方には、近年のコレクションで評価の高かったヴェトモン、グッチ、ルイ・ヴィトンなどの作品が並ぶので、それだけでも見応えがあると思います。今回は衣装のほかにアンディ・ウォーホルや都築響一などのアート作品も多数展示していますし、演劇団体「マームとジプシー」によるインスタレーション作品も発表します。本展はファッションを全体的に捉え、衣装を鑑賞するだけでなく、自分事として“感じる”展覧会を目指しました。隅から隅まで、順番に観る必要はなく、好きな作品、興味がある部分だけを巡って頂いて構いません。それぞれのスタイルで楽しみ、ファッションの面白さ、自由さ、不自由さを感じて欲しい。美術館を出た後に「さて、明日はどんな服を着ようか?」そう思って頂ければ、うれしいですね。

石関亮 KCI学芸課 課長/キュレーター
フランス・レンヌ第2大学造詣美術学部修士課程留学を経て、京都大学大学院人間・環境学研究課修士課程修了。2001年より勤務し、2011年キュレーター就任。服飾研究誌『Fashion Talks...』の編集を担当し、数々の学会発表や講演を行う。

ドレス・コード?
-着る人たちのゲーム 展覧会概要

京都展:2019年10月14日(月・祝)まで
京都国立近代美術館〔岡崎公園内〕会場:京都国立近代美術館(京都市左京区岡崎円勝寺町)
会期:2019年8月9日(金)-10月14日(月・祝)
開館時間:午前9時30分~午後5時
※毎週金曜日、土曜日は午後9時まで開館(入館は閉館の30分前まで)休館日:毎週月曜日
※8月12日、9月16日、9月23日、10月14日(すべて月・祝)は開館、翌火曜日休館
入場料:一般1,300円、大学生900円、高校生500円、中学生以下無料(当日料金)
*心身に障がいのある方と付添者1名は無料(入館の際に証明できるものをご提示ください。)
*本料金でコレクション展(4階展示室)もご覧になれます。

熊本展:熊本市現代美術館2019年12月8日(日)~2020年2月23日(日)

主催:京都国立近代美術館、公益財団法人 京都服飾文化研究財団
後援:京都府、京都市、京都商工会議所、一般社団法人日本アパレル・ファッション産業協会、
一般社団法人日本ボディファッション協会
特別協力:株式会社ワコール
協力:KLMオランダ航空、株式会社七彩、日本航空、ヤマトグローバルロジスティクスジャパン株式会社
助成:オランダ王国大使館、モンドリアン財団
協賛:MHD モエ ヘネシー ディアジオ株式会社

What is KCI?
17世紀から現在までの服飾資料を収蔵する研究財団

KCI(京都服飾文化研究財団)は、衣服の源泉である西欧の服飾、服飾にかんする文献や資料を体系的に収集・保存し、研究・公開する期間。これまでに「モードのジャポニズム」「身体の夢」「ラグジュアリー:ファッションの欲望」など、大規模な企画展を他館と共催し、日本において「美術館で見るファッション展」の流れをリードしてきた。
そのコレクションは、2016年ロシアのクレムリン美術館に招聘されたほか、NYのメトロポリタン美術館をはじめ世界の美術館からの借用要請が絶えない。1978年の設立以来、ワコールが日本の服飾文化の発展に寄与するために活動を支援しており、ワコールホールディングス代表取締役会長 塚本能交氏が理事長を務める。

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