食事の時間になると、「ご飯の時間だよ〜」という声かけから始まる、筆者の5歳の息子との日常。けれど、その時間は決してスムーズには進みません。すぐに席を立ち、話に夢中になり、最後は「ママ、食べさせて〜」と甘えてくるのが当たり前に。そんな“いつもの光景”がある日、思わぬ出来事によってガラリと意味を変えたのです。今回は、筆者が食卓で気づかされた大切な学びの瞬間をお届けします。

慣れてしまった「食べさせる」日常

最初のうちは「今だけの甘えかな」と余裕を持って接していた私も、だんだん「また今日も時間がかかるなぁ」と感じるように。次第に、食事の時間がまるで“作業”のようになっていきました。
「あーんして」「ちゃんともぐもぐしてね」と、口に運ぶことに精一杯になり、息子の様子にじっくり向き合う余裕がいつの間にかなくなっていたのです。

ある日の“異変”が教えてくれたこと

そんなある日、大好物のグラタンを用意した食卓で、息子の反応がいつもと違うことに気づきます。
普段なら「もっと!」とおかわりをせがむのに、その日は2口で「もういらない」と言ったのです。

体調が悪いのかな? と思いつつも、私はいつものように「あーん」とスプーンを差し出しました。
でも、息子はモグモグするだけでなかなか飲み込まない。すると突然、口の中のものをすべて吐き出してしまったのです。

驚いて抱きしめながら謝り、熱を測ると微熱がありました。体調不良だったことに、ようやく気づいた私は、その瞬間に胸が締めつけられるような思いがしました。

ご飯は「育てる時間」ではなく「感じる時間」

あの日のことを振り返ると、息子が出していた“違和感のサイン”はいくつもあったのです。食べるスピード、飲み込まない様子、少ない笑顔……。
でも私は、「早く食べさせなきゃ」「この時間を終わらせなきゃ」という自分の都合を優先してしまっていました。

その出来事をきっかけに、食事の時間の意味を見つめ直すようになります。
食べさせることに一生懸命になるのではなく、「一緒に感じて、一緒に味わう」時間にしよう。そう気づけたのは、息子の“拒否反応”がくれた気づきのおかげでした。

今、大切にしていること

それからというもの、私は息子の表情や仕草により注意を向けるようになりました。
どんなに時間がかかっても、たとえ少ししか食べなかったとしても、「自分のペースで食べること」を大切にしてあげたいと思えるようになったのです。

日々のルーティーンの中で、つい「ちゃんと食べさせなきゃ」「早く終わらせたい」と効率を求めてしまうこともあります。
けれど、小さなサインに気づけるのは、一緒に毎日を過ごしている親だけ。
食事は体を育てるだけじゃなく、心を育てる時間でもある。そのことを、私は息子との時間を通して学びました。

【体験者:30代・主婦、回答時期:2025年5月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

ltnライター:北レン
経理事務・百貨店販売を経て、現在はWEBライターとして活動中。家事や育児と両立できる働き方を模索する中でライターの道へ。自身の体験を活かしながらリアルで共感を呼ぶ記事を多数執筆。人間関係・子育て・日常の“あるある”を中心に、女性に寄り添ったコンテンツを発信している。