
「もう少し気が利けば……」
長男の嫁は、とにかく気が利きません。
決して悪い子ではないのです。
優しくて素直で、可愛らしい子です。
ただどこか大人しくて、内心では「もう少し気を配ってくれたら」と、物足りなく思ってしまうこともありました。
親戚の集まりでも、自分から進んで動くというより、いつも一歩引いて、控えめにしているタイプ。
「私が若い頃は、もっとテキパキ動いたものだけどねえ」なんて、つい、昔の自分と比べてしまうのでした。
大忙しの法事
そんなある日、親戚が大勢集まる法事がありました。
私はお茶出しに料理の支度にと、朝から大忙し。
おまけに、続々と訪ねてくる親戚たちの応対もしなければなりません。
相変わらず、嫁は目立って前に出るわけではなく、忙しく立ち働く私のそばで、静かにしています。
「あぁ、やっぱり気が利かないわねえ」
そう胸の内でつぶやきながら、慌ただしい一日をなんとか終えたのでした。
親戚の一言
ところが後日、親戚の一人から聞いた話に、ハッとさせられたのです。
「あのお嫁さん、本当によく気がつく方ね。あなたが動きやすいように、さりげなく食器を下げたり、足りないものを補充したり、ずっと陰で支えてくれていたわ」
「えっ――」
……そんなこと、まったく気づいていませんでした。
彼女は、ただ控えめなだけ。
姑である私の顔を立てながら、見えないところで、こまやかに動いてくれていたのです。
本当の気配り
「気が利かない」だなんて、とんでもないこと。
出しゃばらず、それでいて姑をそっと立てる——その心遣いこそが、本当の気配りだったのです。
「私は自分の物差しだけで、彼女のことを決めつけていたんだわ」
そう気づいたとき、申し訳なさで胸がいっぱいになりました。
それからは、嫁のさりげない行動にも、きちんと目を向けるように。
今まで気づけなかったぶんも含めて、これからはたくさんの「ありがとう」を伝えたいです。
【体験者:60代女性・専業主婦、回答時期:2026年9月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。


