
子どもから目が離せない家族旅行
ある時、Fさんは子どもを連れて、両親、弟夫婦、その子どもたちと一緒に家族旅行へ出かけました。
楽しみにしていた夕食はバイキング。
しかし当時、Fさんの子どもはまだ小さく、食事中も目が離せない年齢でした。
自分の料理を取りに行こうにも、子どもを一人にするわけにはいきません。
そこで両親に、
「少し見ていてくれへん?」
とお願いしましたが、子どもの世話を代わってもらうことができず、
「自分で選んだ方が楽しいやろ」
と言われ、料理を取りに行ってもらうこともできなかったそうです。
結局、Fさんは子どもに食事を食べさせることを優先し、自分の食事は後回しになっていました。
「見ておくから、ゆっくり食べておいで」
ようやく子どもがお腹いっぱいになり、眠そうになった頃。
家族から、
「見ておくから、ゆっくり食べておいで」
と声をかけられました。
やっと自分も落ち着いて食事ができる。
そう思ったFさんは、安心して料理を取りに行きました。
ところが、料理を手にして席へ戻ると、そこにいたのは母親だけ。
他の家族は、子どもたちを連れてすでに部屋へ戻っていたのです。
母親も、
「みんな先に帰っとくから、ゆっくり食べな。お母さんも部屋に戻るから」
と伝えると、そのまま部屋へ戻ってしまいました。
広いテーブルに一人残されたFさん。
周りを見渡すと、楽しそうに食事をする家族連れがたくさんいます。
「私は何をしてるんやろう」
そう思うと、涙が出そうになったそうです。
本当は手伝おうとしてくれていた
Fさんは寂しさをこらえながら、一人で食事をしていました。
すると、しばらくして弟のお嫁さんが慌てた様子で駆け寄ってきました。
「ごめん、知らんかった」
実は弟のお嫁さんも、Fさんを手伝おうと思っていたそうです。
ところが両親から、
「私たちが見るから大丈夫」
「Fさんが一人で食べたいって言ってた」
と聞かされていたのだとか。
しかしFさんには、一人で食べたいと言った覚えなどありません。
自分が困っていることを家族に分かってもらえなかったこと。
そして、本当には言っていないことまで伝えられていたこと。
その事実を知り、Fさんは複雑な気持ちになりました。
一方で、事情を知った弟のお嫁さんが、すぐに自分のところへ駆け寄ってきてくれたことには救われたそうです。
「何度も謝ってくれて。自分は悪くないのに、わざわざ来てくれたことが嬉しかった」
とFさんは振り返ります。
家族だからこそ伝わらないこともある
旅行そのものは終わりました。
それでもFさんにとって、あの日の出来事は今も心に残っています。
家族だから、きっと分かってくれる。
困っていることにも気付いてくれる。
そう思っていたからこそ、一人で食事をすることになった寂しさは大きかったといいます。
一方で、事情を知った弟のお嫁さんがすぐに駆け寄ってくれたことで、人の優しさも感じることができました。
「家族やから分かってもらえると思ってても、そうじゃないこともあるんやなって思いました。でも、ちゃんと自分の気持ちを分かろうとしてくれる人がおることは嬉しかったです」
と話してくれました。
体験者の声
家族だからこそ、言わなくても分かってもらえると思ってしまうことがあります。
しかし、気持ちを言葉にしなければすれ違ってしまうこともあります。
Fさんにとってこの出来事は、家族との距離感や、思いを伝えることの大切さについて改めて考えるきっかけになったそうです。
【体験者情報:30代・女性主婦、回答時期:2026年6月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。


