嫁の料理を密かに見下していた筆者の知人が、お盆の食卓で完全に言葉を失った話。
画像: 「嫁には台所を任せられない」と思っていた姑の私。【翌朝の食卓】で、込み上げてきたものとは

「ゆっくりしていていいのよ」

お盆の帰省に来た嫁に、私はこう告げました。「台所は私がやるから、ゆっくりしていていいのよ」。

本音を言えば、嫁が去年作った煮物は誰も手をつけず、一昨年の味噌汁は薄すぎて夫が顔をしかめていました。そのため、娘と二人で「今年は私たちでやろう」と決めていたのです。嫁は「ありがとうございます」と素直に引き下がり、私は内心ほくそ笑みました。

翌朝、嫁が台所に立っていた

ところが翌朝、嫁が台所に立っていました。「昨日ゆっくりできたので、今日は私に作らせてください」。にこりと笑って、断る隙も与えません。娘と顔を見合わせましたが、もう嫁を止めることはできませんでした。エプロンをつけて手際よく動く嫁の背中を見ながら、私は複雑な気持ちで立ち尽くします。去年の煮物のことが頭をよぎりましたが、もう口を挟める雰囲気ではなかったのです。

食卓に並んだ料理に言葉が出ない

口に運んだ瞬間……言葉が出ませんでした。だしがしっかりきいた煮物、絶妙な塩加減の味噌汁。去年とも一昨年とも、まるで別の料理だったのです。
息子は「うまい!!」と声をあげ、夫は無言で何度もおかわりをしています。私も気づけば、箸が止まらなくなっていました。あんなに心配していたのに、気がつけば食卓がいつもより明るく賑やかになっていました。嫁の料理が、家族をひとつにしてくれた気さえしました。

お義母さんに認めてもらいたくて

「お義姉さん、めちゃくちゃおいしい。どこで習ったの?」と娘が聞くと、嫁は照れながら答えました。「去年から料理教室に通っていて。お母さんに認めてもらいたくて、ずっと練習していたんです」

胸に、じわりと何かが広がりました。ずっと努力していたのは嫁の方で、気づいてあげられなかったのは私だったのです。私は箸を置いて、嫁に向かって頭を下げました。「来年は、一緒に作りましょうか」

筆者の見解

勝手に決めつけて、勝手に遠ざけていたけれど、相手はずっと歩み寄ろうとしていたのです。思い込みを手放したとき、初めて見えてくるものがあると気づかせてくれたエピソードでした。

【体験者:30代・女性主婦、回答時期:2026年6月】

※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
※本記事内の画像はイメージです。実在の人物・製品・ブランドとは関係ありません。

FTNコラムニスト:北田怜子
経理事務・営業事務・百貨店販売などを経て、現在はWEBライターとして活動中。出産をきっかけに「家事や育児と両立しながら、自宅でできる仕事を」と考え、ライターの道へ。自身の経験を活かしながら幅広く情報収集を行い、リアルで共感を呼ぶ記事執筆を心がけている。子育て・恋愛・美容を中心に、女性の毎日に寄り添う記事を多数執筆。複数のメディアや自身のSNSでも積極的に情報を発信している。

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