今から数十年前、新社会人だったA子さんは、やる気に満ちあふれていました。しかし、当時の職場は、会議で積極的に発言すれば「女が前に出るな」と注意され、黙っていれば「愛想がない」と責められるような環境だったのです。A子さんは今でも、あの理不尽さが忘れられないそうです。

やる気に満ち溢れていた、新卒時代
これは、今からだいぶ前、私が新卒で社会人になったばかりの頃の話です。
入社したてで、やる気に満ちあふれていた私。
熱量高く仕事に取り組み、会議でも積極的に意見を出していました。
「このような案はどうでしょう」
「こうした方が、効率がいいのでは」
まだ大きなプレゼンなどはさせてもらえませんでしたが、細かいことでも自分なりに考え、提案していくことは、自分にも職場にもプラスに働くと考えていたのです。
先輩からの思いがけない注意
ところがある日、思いがけないことが起こります。
先輩の女性社員に呼び出されたかと思うと、注意を受けたのです。
「A子さん、会議で前に出すぎると、男性社員が萎縮するから、控えた方がいいわよ」
……え?
正直、先輩の言っている意味がよくわかりませんでした。
会議に意欲をもって参加し、意見を出すことの何がいけないのでしょうか。
戸惑いながらも、ムキになるわけにもいかず「そういうものなのかな」と悔しい思いを飲み込んだのでした。
「女だから」という理不尽さ
その後も負けじと、会議では意欲的に発言するようにしていましたが、上司の反応は冷ややかなものでした。
「まあまあ」と話を流され、「君はまだ若いから」と封じられるのです――。
さすがに嫌気がさし、ではと黙っていると、今度は「A子さん、聞いているの? 女の子なんだから、もっと愛想よくしないと」と言われるのだから、たまったものではありません。
発言しようが、黙ろうが、女である限り責められるしかないのでしょうか。
次第に、私はどうすればいいのかわからなくなってしまい、あれだけ情熱を燃やしていた仕事も、なんだかどうでもよくなってしまいました。
悔しい思い出
数年後、中途入社してきた男性社員が、ある会議でこんな提案をしました。
「A案のような、新しい切り口でプロジェクトを進めるのはどうでしょう」
これに、上司は目を輝かせて答えます。
「斬新なアイディアじゃないか! いいね、その方向で進めよう」
……開いた口が塞がりませんでした。
彼の案は、以前私が提案したものと、まったく同じだったからです。
わたしのときは、ろくに話も聞いてもらえず、「まあまあ」と軽くあしらわれたのに。
悔しくて悔しくてたまらなかったのを、今でも覚えています。
今、私にできること
それからも、「女だからしかたない」「そういうものだから」と言われ、あきらめざるをえなかったことが多くありました。
今考えても、やっぱりそんなのは理不尽ですよね。
あれから数十年たち、当時よりは、女性もだいぶ働きやすくなったかもしれません。
それでも時折、「あの頃と変わらないな」と感じる場面があるのも事実です。
体験者の声
あの日、会議で口を閉ざすことしかできなかった私と同じ思いを、これからの世代にはしてほしくない。
そんな想いで、現在の私は、部下たちの言うことは頭ごなしに否定せず、彼らの言葉にしっかりと耳を傾けるよう、心がけています。
【体験者:50代女性・会社役員、回答時期:2026年6月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。


