筆者の離婚が決まった頃、実家へ帰ろうとした私に母は思いがけない言葉を口にしました。
当時はその意味が分からず、複雑な気持ちを抱えていて──。
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母の言葉

「しばらく帰ってこんとって」
離婚が決まった頃、実家へ帰ろうとした私に母はそう言いました。
突然の言葉に耳を疑いました。
離婚後はしばらく実家に落ち着こうかと考えていたわけではありません。
ただ、実家に顔を出すことまで止められるとは思っていなかったのです。

当時は今ほど離婚が一般的ではありませんでしたが、それでも周囲の目は厳しいものでした。
近所付き合いが濃く、親戚同士のつながりも強かったため、人のうわさ話が広まることも珍しくありません。
それでも私は、母の言葉に戸惑いを隠せませんでした。

複雑な思い

当時は親戚が集まるたびに誰かの近況が話題になり、近所でも人のうわさ話を耳にすることが珍しくありませんでした。
離婚したことが知られれば、あれこれ言われるかもしれない。
そんな心配があったのでしょう。

それでも当時の私は納得できませんでした。
離婚は確かに望んだ結果ではありません。
しかし、自分なりに考えて出した結論です。
それなのに、まるで隠さなければならないことのように扱われている気がしたのです。
「離婚ってそんなに隠さなければならないことなのだろうか」
母の言葉を思い出すたび、納得できない気持ちだけが残りました。

会えぬ一年

結局、その後一年ほど私は実家に帰りませんでした。
母とは喫茶店など実家以外で会うようにしていたのです。

親子の関係が悪くなったわけではありません。
けれど、実家へ行けない状態が続くたびに、母のあの言葉を思い出していました。
「しばらく帰ってこんとって」
今なら短いひと言ですが、実家に帰るのを控える日々が続き、その言葉は忘れられませんでした。

筆者の見解

あれから長い年月が過ぎました。
今振り返ると、母は私を拒絶したかったのではなく、世間の目から守ろうとしていたのだと思います。
結婚を続けることが当たり前とされ、離婚は人に知られたくない出来事として受け止められていました。

「結婚して一人前」「離婚は恥ずかしい」
そんな価値観が当たり前だった時代です。
今では結婚も離婚も人生の選択の一つとして受け止められるようになりました。
母の「しばらく帰ってこんとって」という言葉を思い出すたび、あの頃は自分の気持ちよりも世間の目が優先される時代だったのだと感じます。

【体験者:50代・筆者、回答時期:2026年6月】

※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

FTNコラムニスト:Kiko.G
嫁姑問題をメインテーマにライター活動をスタート。社宅生活をしていた経験から、ママ友ネットワークが広がり、取材対象に。自らが離婚や病気を経験したことで、様々な悩みを持つ読者を元気づけたいと思い、自身の人脈や読者の声を取材し、記事として執筆。noteでは、糖尿病の体験記についても発信中。

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