
人混み、立ちっぱなしのバス内で
私は現在、第一子を妊娠中。妊婦健診に行くため、バスに乗っていたときのことです。
妊娠6か月にさしかかったくらいですが、初産ということもあり、まだお腹はそこまで出ていません。そのため、マタニティマークは付けていませんでした。
その日のバスはわりと混んでいたため、立って病院へ向かうことに。20分ほどの距離ですが、乗ってから5分ほど経ったところで少しずつ気分が悪くなってしまいました。
つわりはすでにおさまって体調は良いと思っていましたが、妊婦にとって人混みの中での立ちっぱなしはつらいものがあります。
「貧血かな」
「今から病院に行くし、ついでに相談しよう」
そう思いつつ、やり過ごしていました。
貧血でピンチ!
しかし、時間を追うごとに症状はどんどん悪化。冷や汗が出て、気持ち悪さも増してきました。
両手でバーを抱きしめるようにつかまり、少し前かがみになりながら必死に耐えていました。病院までは、まだ10分以上あります。バスをいったん降りて、外の空気を吸って休憩したほうがいいかとも思いました。
「健診の予約時間があるし……」「もしこのまま倒れてしまったら危ないよね」などと考えていましたが、いよいよまずいと思ったそのとき。
後ろから「すみません」と誰かに声をかけられたのです。
声をかけてくれた若者
声をかけてくれたのは、私の斜め後ろに座っていた男性でした。
サングラス、ジャラジャラとした金のネックレス、細身のデニム、金髪姿のとても若い男性。普段接することのないような人に突然声をかけられて驚いていると「あのっ、よかったらここ! どうぞ!」と、ハキハキした声でそう言ってくれたのです。
「なんか、しんどそうに見えたから」
「あのっ、違ったらすみません!」
そう慌てる男性に「ありがとうございます、妊娠中でしんどくて」と言うと、さらに慌てて「えっ、どうぞ! 気づくのが遅くてすみませんっ!」と言ってくれました。
見知らぬ私を助けてくれたことへの感謝
譲ってもらった席に座ると、少しずつ気分の悪さが落ち着いていきました。
席を譲ってくれた男性がバスを降りようとしていたので、「あの、ありがとうございました!」と声をかけました。男性はこちらを向いて親指を立て、そのままバスを降りて行ったのです。
とても嬉しい気持ちのまま、無事に健診へ。あの男性が気づいてくれたこと、勇気を出して見知らぬ私を助けてくれたこと。すべてが嬉しく、ほっこりとした気持ちになりました。
【体験者:30代・女性主婦、回答時期:2026年1月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
FTNコラムニスト:清水マキ
育児を機にキャリアを転換し、独学からライター講座の添削講師まで登り詰めた実力派。PTAやスポ少での積極的な交流から、ママたちの「ここだけの話」を日々リサーチ。金融記事も手がける確かな知性と、育児に奮闘する親としての等身大な目線を掛け合わせ、大人女性のライフスタイルから切実な悩みまでを鋭く、温かく描き出す。

