
ようやく始まったスマホ生活
義父は、つい最近までガラケーを使っていました。
長年使っていた端末が壊れたことをきっかけにスマホへ買い替えたのですが、本人はあまり乗り気ではありません。
周囲も「お父さんには難しいだろう」と考えていたようで、積極的に使い方を教える人もいませんでした。
私は帰省するたびに、LINEやメッセージの送り方を教えていました。ところが、そのたびに最初からやり直しです。
「LINEはどこを押すんだっけ?」
「写真はどこで見れるんだ?」
毎回そんなやり取りの繰り返しでした。
それでも孫の写真だけは見られるようになり、「おっ、見れた見れた!」と嬉しそうにしていたので、それで十分だと思っていたのです。
実際、使い道を聞いても「電話以外は使ってないよ」という返事ばかり。
そのため私は、スマホは電話専用になっていると考えていました。
電話している相手は誰?
ある日、義父が台所でお餅を手に何やら考えていました。
「これ、レンジでできるのかな?」
私は「少しぬらしてから温めると、柔らかくなりますよ」と答えました。
ところが義父は、「ふーん」と言ったまま部屋を出て行ってしまったのです。
しばらくすると、別の部屋から話し声が聞こえてきました。
「もしもし、お餅ってレンジで食べられるの?」
(えっ? そんなことで誰に電話してるの!?)
親戚でしょうか、それとも友人でしょうか。私は思わず耳を傾けました。
すると相手は、
「電子レンジで30秒ほど加熱してください」
「様子を見ながら追加してください」
と、やけに的確。
(親戚にしては詳しいし、なんだか声が若い)
体験者の声
不思議に感じていると、義父が満面の笑みで戻ってきました。
「レンジで30秒だって!」
そして得意そうに、スマホの画面を見せながら言ったのです。
「これ知ってる? 何でも答えてくれるんだよ」
画面には、まさかのAIアプリ。
私は吹き出しました。
LINEは見る専門、スタンプも送れない。
そんな義父がAIを使いこなしているのです。
「お義父さん! いつの間に!」
「簡単だから、使ってみるといいよ!」と笑う義父。
あれだけ苦戦していたのに、まさかAIを活用しているなんて。
スマホは苦手だと思い込んでいましたが、実際は違ったのかもしれません。文字を入力するのは面倒でも、話しかけるだけなら気軽だったのでしょう。
「お父さんには難しい 」と決めつけていたのは、周りのほうだったのかもしれません。
次に帰省したときには、お餅だけでなく夕飯の献立までAIに相談しているかもしれません。そう思うと、少し楽しみになった出来事でした。
【体験者:40代・筆者、回答時期:2026年6月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
FTNコラムニスト:大空琉菜
受付職を経て、出産を機に「子どもをそばで見守りながら働ける仕事」を模索しライターに転身。 暮らしや思考の整理に関するKindle書籍を4冊出版し、Amazon新着ランキング累計21部門で1位に輝く実績を持つ。 取材や自身の経験をもとに、読者に「自分にもできそう」と前向きになれる記事を執筆。 得意分野は、片づけ、ライフスタイル、子育て、メンタルケアなど。Xでも情報発信中。

