旅先では、思いがけない人に声をかけられることがあります。
今回は、昔からなぜか“少し変わった人”に遭遇しやすい筆者が、社会人1年目のとき、京都旅行で体験した不思議な出来事をご紹介します。突然怒鳴られ、まさかの展開を迎えたその出来事は、今でも忘れられない思い出になっています。

その瞬間、私は思わず反応してしまいました。

その言い回しには、聞き覚えがあったからです。

父の影響で昔から好きだった、忠臣蔵の世界そのものでした。

私は反射的にこうツッコミを入れていました。

「誰が吉良上野介やねん! 仇討ちやないかい!」

すると、それまで怒っていた男性の表情が一変。

「これ知ってんのか!!」

と、急に嬉しそうな顔になったのです。

まさかの忠臣蔵談義へ

そこから空気は完全に変わりました。

男性は、まるで長年の友人に会ったかのように忠臣蔵について語り始めます。

気づけば私も友人も巻き込まれ、バスが来るまでの間、なぜかその場で忠臣蔵談義が始まっていました。

「やっぱりあの場面がええよな」
「討ち入り前の流れが熱い」

そんな話で盛り上がり、最後には男性としっかり握手までして解散。

つい先ほどまで怒鳴られていたとは思えない終わり方でした。

人との距離感で見え方は変わる

もちろん、突然怒鳴られるのは怖いものです。

だからといって、最初から完全に拒絶するだけでは見えないものもあるのかもしれません。

あの日の私は、必要以上に近づくこともなく、かといって感情的に言い返すこともなく、程よい距離を保ちながら相手と接していました。

すると、ただ怖いだけだった空気が、最後には思いがけず笑い話へと変わっていったのです。

怖いと思っていた相手でも、蓋を開ければただ「好きな話を共有したかった人」だったのかもしれません。

人は時に、不器用な形で自分の気持ちを表現することがあります。

だからこそ、自分も相手も傷つかない距離感を保ちながら接することの大切さを、あの日の出来事は教えてくれました。

今振り返っても、あの京都での不思議な出会いは、私にとって忘れられない思い出です。

【体験者:30代・筆者、回答時期:2026年5月】

※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

FTNコラムニスト:Anne.R
看護師として9年間、多くの人生に寄り添う中で「一人ひとりの物語を丁寧に伝えたい」とライターの道へ。自身の家づくりやご近所トラブルの実体験に加え、現在は周囲へのインタビューを通じ、人間関係やキャリアなど女性の日常に寄り添った情報を発信している。

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