葬儀の場では、その人の本質がふと見えてしまうことがあります。しめやかに故人を送り出したいと願う遺族の気持ちとは裏腹に、周囲の予期せぬ言動に戸惑ってしまうことも少なくありません。今回は、筆者の友人の体験談をお届けします。

静かに響いた一言

その時、父の親友だったAさんが席を立ち、静かに叔父の肩を叩いたのです。
Aさんは高齢ながら凛とした声で、こう言いました。

「あんたの成功はめでたいが、今はあいつが旅立つ、たった一度の時間なんだ。自慢話じゃなく、あいつと笑い合った思い出話の一つでも持ってきてやってくれんか」

その言葉に叔父は一瞬で顔を赤くし、いたたまれなくなったのか、そそくさとその場を離れていきました。
あの時のAさんの背中は、本当に頼もしかったです。

父が繋いでくれたもの

叔父が去った後、Aさんを中心に父の思い出話が自然と広がりました。

会社での活躍や、若かりし頃の失敗談……会場はいつの間にか穏やかな笑いと涙に包まれ、私はようやく「父らしい」お別れができた気がしたのです。

叔父の自慢話よりも、Aさんが語ってくれた父の話のほうが、私には何倍も大切に思えました。
見栄や数字ではなく、誰かの心に残っている記憶こそが、父がこの世に生きた確かな証です。

父が最後に引き合わせてくれた温かい縁に、本当に救われた一日でした。

【体験者:40代・女性会社員、回答時期:2026年4月】

※本記事内の画像はイメージです。実在の人物・製品・ブランドとは関係ありません。

※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

FTNコラムニスト:藍沢ゆきの
元OL。出産を機に、育休取得の難しさやワーキングマザーの生き辛さに疑問を持ち、問題提起したいとライターに転身。以来恋愛や人間関係に関するコラムをこれまでに1000本以上執筆するフリーライター。日々フィールドワークやリモートインタビューで女性の人生に関する喜怒哀楽を取材。記事にしている。

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