春は、新しい生活を始める人たちの緊張や期待が、空気に混ざっているような気がして、不思議と心がざわつく季節ですよね。そんな中、ふとした瞬間に過去の記憶が呼び起こされることはありませんか? 今回は、筆者の友人の体験談をお届けします。

溶けていく過去の未練

柱の影からそっと伺うと、彼は少し慣れない手つきでベビーカーを押していました。
ぐずる子供に腰を落とし、「大丈夫だよ」と語りかける、その穏やかな眼差しは、かつて私に向けてくれた温かさそのものでした。

あの優しい人が、今は誰かの夫として、そして父親として、新しい家族を守っている。
その光景を見たとき、私の胸の奥にひっそりと残っていた「もしも」という想いが、静かに溶けていくのを感じました。

それぞれの道を歩む幸せ

彼は彼にふさわしい幸せを掴み、私は私でこの5年を必死に生きてきた。
私たちの選択は、間違いじゃなかった。
もしあのとき無理をしていたら、今日のこの穏やかな彼の笑顔も、今私が手にしている自立した生活もなかったのだ。

そう確信したとき、ようやく過去が、あるべき場所に収まった気がしたのです。

声はかけず、心の中で「元気そうでよかった。幸せでいてね」と呟いて、彼を乗せた電車がホームを離れていくのを見送り、私は反対側のホームへ歩き出しました。

未練が感謝に変わる瞬間の清々しさは、大人になったからこそ味わえるものかもしれません。
またひとつ成長できた気がした、4月の出来事でした。

【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2026年3月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

FTNコラムニスト:藍沢ゆきの
元OL。出産を機に、育休取得の難しさやワーキングマザーの生き辛さに疑問を持ち、問題提起したいとライターに転身。以来恋愛や人間関係に関するコラムをこれまでに1000本以上執筆するフリーライター。日々フィールドワークやリモートインタビューで女性の人生に関する喜怒哀楽を取材。記事にしている。

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