筆者の話です。重度知的障害の長男が地下鉄を利用して通所できるまでに成長したものの、やがて失踪や遅刻が続発してしまい、私達で送迎することにしました。しかし、送迎を分担するはずが、夫は次々と仕事を理由に辞退。そして繰り返される「お前の方が稼いでいないんだから」という言葉。限界を迎えた妻が夫に告げた一言とは?

決壊した感情

限界を超えたのは、夫が「今日も無理」と言ってきたある木曜日の午後のことでした。

私はその日、午前から仕事をこなし、昼には別の用事を片付け、夕方には長男が帰宅する前に片付けておきたい仕事があったのです。

夫からの言葉を聞いた瞬間、私の中で何かが決壊しました。

「ひとつ確認させて。あなたが仕事を理由に動けないのはわかった。でも私も仕事をしている。家事も育児も私がやっている。稼ぎの差は確かにあることもわかっている。もし「稼ぎが少ない方が家の全責任を負う」というのが私たちのルールなら、それを最初にはっきり決めましょう。そうじゃないなら、稼ぎを理由に押し付けるのは今日でやめてほしい」

私がそう言うと夫は黙りました。
しばらくして「……わかった、今日は俺が行く」と言いました。夫から出た言葉はそれだけです。

でも、長年胸の中で燻り続けていた何かが、すうっと静かに下りていく感覚がありました。

新たなルール

この一件を経て、夫との役割分担を改めて話し合い、曜日ごとの担当を書面で明確にしました。

機械的に見えますが障害のある子どもを共に育てるということは、感情だけでは支えきれない現実との戦いでもあります。

家族の中で「稼ぎの差」が「責任の差」になってはいけないと思います。書面で役割分担を明確にしたことで、夫も「今日は自分の担当日だ」という意識が芽生えたようです。

完璧ではありませんが、以前のように一方的に押し付けられることはなくなりました。

【体験者:50代・筆者、回答時期:2026年3月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

FTNコラムニスト:藍沢佑菜
管理栄養士の資格を持つ、2人の自閉症男子のママ。自身の育児環境の変化をきっかけに、ライター活動をスタート。食と健康を軸に、ライフスタイル全般のコラムを得意とし、実体験に基づいたリアルな記事を執筆中。専門的な情報を「わかりやすく、すぐに日常に取り入れられる形」で伝えることが信条。読者の「知りたい」に寄り添い、暮らしを整えるヒントを発信しつづけている。

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