年末年始といえば、家でのんびり過ごすはずが、帰省や親戚の集まりでかえって普段よりも疲れてしまう……なんてこと、ありませんか? 今回は、そんな忙しない年末年始にまつわる、筆者の知人のエピソードをご紹介します。

なんと彼女が向かった先は、私の両親が眠る故郷のお墓と、久しく訪れていなかった懐かしい温泉街でした。

「『実家』に帰るって言いましたよね? お義母さんのご実家ですよ」と、A子さんは悪戯っぽく笑いました。

向かった先で知った本心

「毎年、台所で『親の墓参りも行けてない』って呟いてたでしょう? だから今年は、お義母さんが娘に戻れるお正月にしたかったんです」

A子さんの言葉に、私は自分の勘違いを恥じるとともに、感謝で目頭が熱くなりました。

「親戚の方々には、夫から上手く断ってもらいましたから大丈夫。それに、お節の宅配も頼んでおいたので、お義父さんのことも心配ありませんよ」

A子さんと息子は、宿の手配を進めてくれていただけでなく、私が責められないように家のことも考えてくれていたのです。

「非常識な嫁」と思っていたのに、実は……

「今回は私が運転手兼ツアコンです。何もしないでゆっくりしてください」
A子さんは「嫁の務め」を放棄したのではなく、私を「家の呪縛」から解放してくれたのでした。

数年ぶりに手を合わせた両親の墓前、旅館でA子さんが注いでくれたお酒、上げ膳据え膳のありがたさ……。
故郷の空気は冷たくも、涙が出るほど温かいものでした。

自分たちの楽しみよりも、私の秘めた想いを優先し、叶えてくれたA子さん。
彼女のおかげで、忘れられないお正月を過ごすことができました。

【体験者:60代・女性主婦、回答時期:2025年12月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

FTNコラムニスト:藍沢ゆきの
元OL。出産を機に、育休取得の難しさやワーキングマザーの生き辛さに疑問を持ち、問題提起したいとライターに転身。以来恋愛や人間関係に関するコラムをこれまでに1000本以上執筆するフリーライター。日々フィールドワークやリモートインタビューで女性の人生に関する喜怒哀楽を取材。記事にしている。

コメントを読む・書く

This article is a sponsored article by
''.