訪問看護師として働く私。技術と経験には自信があり、義父の看取りが決まった際も「私が完璧なケアをして恩返しをする」と意気込んでいました。しかし、義父は私の申し出を頑なに拒否します。その理由とは? 友人が、体験談を語ってくれました。

最初は、私の技術が信用されていないのかと寂しく、どこか虚しい気持ちにもなりました。しかし、何度も言葉を交わすうちに気づいたのです。

私にとっては「日常的な医療行為」でも、義父にとっては「息子の嫁に、下の世話や弱りきった姿を見せる」という、耐え難い恥じらいがあるのだと。

私が選んだ「何もしない」というケア

義父は、最期まで私に対して「威厳ある義父」でいたかったのでしょう。

私の「やってあげたい」という気持ちは、プロとしての自負が先走った看護師としてのエゴだったのかもしれない。

義父の最後のプライドを守ることこそが、今の私にできる一番のケアなのだと、自分を納得させました。

結局、義父のケアは地域の看護師さんにお任せし、私はただの「家族」として、枕元で手を握りました。

亡くなる直前まで、「世話かけたな」とは言わず、「仕事に行け」と私を気遣った義父。

最期の最期まで、頑固で優しい「お義父さん」を貫き通したその生き様には、プロの私も脱帽したのでした。「何もしない」という選択が、私たちがたどり着いた最高の親孝行の形だったのだと、今では胸を張って言えます。

【体験者:50代・女性看護師、回答時期:2025年12月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

FTNコラムニスト:Yuki Unagi
フリーペーパーの編集として約10年活躍。出産を機に退職した後、子どもの手が離れたのをきっかけに、在宅webライターとして活動をスタート。自分自身の体験や友人知人へのインタビューを行い、大人の女性向けサイトを中心に、得意とする家族関係のコラムを執筆している。

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