筆者の体験談です。
国際線で流れた「ご協力ください」という機内放送に、私は思わず顔を上げました。
旅の終わりに、余ったコインの「行き先」を知った瞬間──心がふわりと温かくなったのです。

引き出しに残るコインのこと

海外旅行のたびに、小銭だけが手元に残ることがあります。
紙幣は両替できても、硬貨は日本に戻ると使い道がなく、財布の隅にひっそり残ったまま。
そのうち「また次の旅行で使うだろう」と思いながら、結局は引き出しにしまい込んでしまうことも少なくありません。
次の旅行の時には、その存在すら忘れてしまうことも多かったのです。
その光景が頭に浮かび、思わずポーチをぎゅっと握りました。

残りものが力に変わる瞬間

袋の中をのぞくと、さまざまな国の硬貨や紙幣がカランと音を立てています。
「こんなふうに集められて、どこかで役に立つのか……」と思った途端、ポーチの中のコインが急に違う意味を帯びて見えました。
私にとっては使い切れなかった「残りもの」。
でも誰かに届くなら、それはもう不要品ではなく、小さなエールなのかもしれない。
そんなふうに感じたのです。

旅の終わりに見えたやさしさ

袋に硬貨を入れたとき、手と心が軽くなる感覚がありました。
機内のざわめきの中で、ほんの少しだけ自分も世界とつながれたような気がして、胸がやさしくしんと落ち着いていったように思います。

使わずに眠らせるはずだったコインが、誰かの力に変わる。
その仕組みを知っただけで、帰り道の景色がいつもより柔らかく見えた時間でした。
旅の最後に、こんな優しさに触れられるとは意外な出来事でした。

【体験者:50代女性・筆者、回答時期:2025年11月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

FTNコラムニスト:Kiko.G
嫁姑問題をメインテーマにライター活動をスタート。社宅生活をしていた経験から、ママ友ネットワークが広がり、取材対象に。自らが離婚や病気を経験したことで、様々な悩みを持つ読者を元気づけたいと思い、自身の人脈や読者の声を取材し、記事として執筆。noteでは、糖尿病の体験記についても発信中。

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