筆者友人A子の話です。終電を逃す夫と、深夜にスマホを握りしめる妻。何度注意しても繰り返される夜の攻防戦が、ついに思わぬ形で終止符を迎えました。
画像: 午前3時に「ピンポーン」玄関を開けると「お金がない! 助けてくれ」青ざめた夫の【耳を疑う失敗】

終電後の沈黙。鳴らぬスマホを握りしめて

「また、連絡なし?」
私はスマホの画面を見つめながら、ため息をつきました。時計の針はもう午前1時。夫は会社の人と飲みに行くのが大好き。「飲み過ぎないから」と言いつつ、帰宅はいつもタクシー。寝過ごして終電を逃すのが、もはや“定番”になっていました。
「何度言っても、同じことの繰り返し……」そうつぶやきながら、私はあきれ半分、怒り半分でスマホを握りしめていました。

鳴り響くインターホン。そこに映っていたのは……

午前3時。ようやく鳴ったのは、LINEではなくインターホン。
ドアを開けると、そこには青ざめた夫が立っていました。
「お金が、ない……」
寝過ごして途中駅で降り、慌ててタクシーに乗ったものの——財布もカバンも電車の中。
「は? どうやって帰ってきたの?」
「タクシーの運転手さんが、そこで待っててくれてる」
怒りを通り越して、もう笑うしかありませんでした。深夜3時、夫のミスで運転手さんを待たせ、私が代金を支払うという状況は、心底やるせない気持ちになりました。

玄関での“反省会”

タクシー代を払い終えると、夫はしょんぼりと頭を下げました。
「本当に、すまん……」
「ねぇ、これで何回目だと思ってるの?」
静まり返ったリビング。怒鳴る気力もなく、私は淡々と問いかけました。
夫は「もうタクシーには乗らない」と小さく宣言。
その顔はさすがに、少しだけ本気に見えました。スマホも財布も失って、ようやく現実がわかったようです。

小さな変化、小さな成長

翌朝、駅に問い合わせたら、奇跡的にカバンが見つかりました。
「全部あった!」と子どものように喜ぶ夫を見て、私は苦笑い。
それからの飲み会では、「今日は一次会で帰る」とLINEが届くようになりました。
完璧ではないけれど、少なくとも“反省”という文字が夫の辞書に追加されたようです。

たまたま今回は、スマホと財布をなくすという手痛い失敗をしてしまいましたが、夫には必要な「気づき」だったのかもしれません。
痛い目のあとにやっと芽生えた、ささやかな成長。それもまた、夫婦の歴史の一ページです。

【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2025年10月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

FTNコラムニスト:K.Matsubara
15年間、保育士として200組以上の親子と向き合ってきた経験を持つ専業主婦ライター。日々の連絡帳やお便りを通して培った、情景が浮かぶ文章を得意としている。
子育てや保育の現場で見てきたリアルな声、そして自身や友人知人の経験をもとに、同じように悩んだり感じたりする人々に寄り添う記事を執筆中。ママ友との関係や日々の暮らしに関するテーマも得意。読者に共感と小さなヒントを届けられるよう、心を込めて言葉を紡いでいる。

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