一生懸命に頑張る人へ、無神経な言葉を投げかける人はいませんか。筆者の知人A子も、そんな一言に深く傷ついた経験があります。
彼女は、ある出来事を機に夢だった介護福祉士になりました。やりがいを感じていた矢先、再会した同級生から思いもよらない言葉を浴びせられたのです。A子を戸惑わせたその言葉とは? そして、彼女の心を救った出来事を紹介します。
画像: 「大学出たのに、介護職!? 私なら選ばない」心ない一言に絶句 → 救ってくれたのは『利用者さん』だった

介護の道へ進んだきっかけは、大好きな祖母

90歳でも元気で、料理上手でおしゃべり好きな祖母。私は祖母の若いころの話を聞くのが大好きでした。そんな祖母が、庭で転んだのをきっかけに脳梗塞で倒れてしまったのです。

命に別状はありませんでしたが後遺症が残り、入院生活で歩行も難しくなりました。

退院後は、両親と私で協力しながら自宅介護の日々がスタート。以前のように外出や料理はできなくなりましたが、大好きな祖母が生きていてくれる、一緒に家で過ごせる、私にはそれが何より嬉しかったのです。

夢を叶え、介護福祉士として歩み始めた日々

祖母の自宅介護は、見様見真似でした。ベッドから起こすとき、お世話をするとき、戸惑うことばかり。「祖母に快適に過ごしてほしい」「介護を基礎から学びたい」その思いが、私を福祉の道へと導きました。

大学で介護福祉士の資格を取り、地元の施設で働き始めたのです。祖母の介護では余裕がなく、話をじっくり聞けなかった後悔もありました。だからこそ、施設では「利用者さんの小さな話にも耳を傾けること」を何より大切にしてきたつもりです。

出勤前、ベッドから手を振って見送ってくれた祖母は、数年後、自宅で安らかに息を引き取りました。その後も私は、祖母が教えてくれた「寄り添う」ことを胸に、介護福祉士としての日々を過ごしていました。

「大学出たのに、介護職!?」同級生の心ない一言

そんなある日、地元の秋祭りで高校の同級生にばったり会いました。私は職場の利用者を引率し、車椅子を押している最中でした。久しぶりの再会。彼女は私に気づくなり、開口一番こう言ったのです。

「え!? 大学出たのに、介護職!? 私だったら絶対選ばない」

思いもよらない言葉に、私は戸惑いました。「楽しくやってるよ」と何とか言葉を返し、その場を離れましたが、心には何とも言えないモヤモヤが残りました。

利用者さんの「ありがとう」が、私を救ってくれた

施設に戻っても、同級生の言葉が頭の隅に引っかかっています。「大学出たのに、介護職」あの言葉が、ふとした瞬間に蘇りました。

「こんな気持ちのままじゃだめだ」と私は気を取り直し、担当の利用者さんのお部屋を訪問。いつも大切にしている「話を聞く」ことに集中し、お祭りの感想や世間話に耳を傾けていました。そのときです。

ふと、利用者さんが私の手をそっと握りました。
「あなたがこうして話を聞いてくれて、本当に嬉しいわ。いつもありがとうね」

目に涙を浮かべて、まっすぐに伝えてくれた感謝の言葉。その瞬間、心の底から熱い喜びが込み上げ、さっきまでのモヤモヤはすっかり吹き飛んでしまいました。

人の価値はさまざまですが、私はこの仕事が大好きです。他人の評価に惑わされず、自分が選んだ道を歩いていきます。

【体験者:30代・女性介護職員、回答時期:2025年9月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

FTNコラムニスト:Yumeko.N
元大学職員のコラムニスト。専業主婦として家事と子育てに奮闘。その傍ら、ママ友や同僚からの聞き取り・紹介を中心にインタビューを行う。特に子育てに関する記事、教育機関での経験を通じた子供の成長に関わる親子・家庭環境のテーマを得意とし、同ジャンルのフィールドワークを通じて記事を執筆。

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