「みんなが泣いたのに、俺だけ泣けない」と、自分の感受性に劣等感を抱き始めた小学生の息子。親である友人がかけた言葉とは……? 友人が体験談を語ってくれました。
画像: 感動アニメに「俺だけ泣けない」と不安がる息子。母が伝えた『涙の数では測れないもの』

「俺、1回も泣けなかった」息子が抱えた劣等感

先日、家族で話題のアニメ映画を観に行きました。

息子は「面白かった!」と感動しきり。

翌日の学校では、お友だちが「3回泣いた!」「5回泣いた!」と泣いた回数を競い合うように盛り上がっていたそうです。

それを聞いた息子は、帰宅後、寂しそうに私に訴えてきました。

「俺、1回も泣けなかった。何回も泣けるなんて、羨ましい」

涙が出ない自分を責める息子

私は、
「漫画で内容を知っていたからだよ」

「泣くことがすべてじゃないよ、面白かったんだから、それでいいんだよ」

と伝えましたが、息子の顔は晴れません。

「俺って感動して泣いたことがない。もしかして、心がつめたいのかな?」

と言い出し、涙を流せないことに劣等感を抱いているようでした。

「お母さんが泣いたの、ここ?」隠された息子の本音

また別の日。

私は読んでいた漫画で感極まり、「お母さん泣いちゃったよ」と伝えると、息子もその漫画を読み始めました。

しばらくして、息子は私に泣いたページを見せながら、

「お母さんが泣いたのってここ? 俺、泣けなかった。感動はするけど、涙が出ない」

と、まるで宿題ができないかのように悔しがったのです。

息子は、泣くことを通じて、自分の感受性の深さを確認したいのだと気づきました。

涙の回数で感動は測れない

私は、息子の不安を解消するため、自分の経験を伝えました。

「お母さんも子どもの頃は、映画や漫画を見ても泣くことはなかったよ。高校生くらいになって初めて、物語を深く理解できるようになって、心を揺さぶられて涙が出たんだ」

「涙の回数が多いからって感受性が強いわけじゃない。あなたの心には、ちゃんと感動が入っているよ。泣くのは、心が『もういっぱいだ!』って溢れた時に起こる、体の大事な反応なんだよ。焦らなくていいんだよ」

泣くことができない自分を責め、悔しがる息子の姿は、とても純粋で愛おしくもありました。

でも、何かを見たり聞いたりした感情の深さは、涙という物理的な指標で測るものではありません。

私ができることは、「それでいいんだよ」と子どものありのままの感情を肯定し、「あなたの心はちゃんと動いている」という安心感を与えることだと、改めて学びました。

【体験者:40代・女性パート、回答時期:2025年10月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

FTNコラムニスト:Yuki Unagi
フリーペーパーの編集として約10年活躍。出産を機に退職した後、子どもの手が離れたのをきっかけに、在宅webライターとして活動をスタート。自分自身の体験や友人知人へのインタビューを行い、大人の女性向けサイトを中心に、得意とする家族関係のコラムを執筆している。

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