筆者の話です。
隣家の奥さんが「いつでも取っていいよ」と言ってくれる畑の大根。
元・給食調理員の母は、もらった野菜でおかずを作り、お隣へおすそ分けするのが日課になりました。
忙しい隣家との間に生まれた『ありがとう』のやりとりが、静かな町に灯をともすように、冬の夕暮れをやさしく照らしていました。

冬の忙しさの中で交わされた言葉

冬場の収穫期、お隣は夜遅くまで作業が続くようでした。
家の外までライトが照らされ、寒風の中で選別機の音が響く夜もあります。

そんな日には母が「疲れてるだろうから」とできたばかりのおかずを持って行くのです。
「おかずがあると思うと、もう少しだけ仕事が頑張れる」と言われたその一言に、母は目を細めていました。
やり取りのたびに、心がぽっと温かくなるのを感じたのです。

「お互いさま」が灯す夕暮れのぬくもり

日が落ちるころ、「ありがとう」とお隣から声が響くと、母も「こちらこそ」と返します。
その声が冬の冷たい空気に溶けていく瞬間、どこか懐かしいぬくもりが胸に広がりました。

野菜を分け合い、手間を分かち合う。
そんな「お互いさま」の関係が、冬の町に今も小さな灯をともしています。

【体験者:50代女性・筆者、回答時期:2025年10月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

FTNコラムニスト:Kiko.G
嫁姑問題をメインテーマにライター活動をスタート。社宅生活をしていた経験から、ママ友ネットワークが広がり、取材対象に。自らが離婚や病気を経験したことで、様々な悩みを持つ読者を元気づけたいと思い、自身の人脈や読者の声を取材し、記事として執筆。noteでは、糖尿病の体験記についても発信中。

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