手作りお菓子には、作った人の温かい気持ちがこめられているように感じます。美味しいお菓子を作れる人ってなんとなく、優しくて心に余裕がある人というイメージがありませんか? 今回はそんなお菓子作りが上手なママ友の、誰も知らなかった一面を知ってしまった経験のある筆者の知人Tさんのお話です。
画像: ママ友のお菓子教室、なぜか毎回『ドーナツ』ばかり。「何でうちだけ?」実は“恐ろしい理由”が隠されていた

お菓子作りが得意なママ友

Tさんは幼稚園の子を持つママ。

新築の一戸建てを購入して引っ越し、子どもを新しい幼稚園に転園させたばかりでした。

すぐに同じ幼稚園のママ友も数人できて、Tさんはお茶やランチ、お買い物などママ友と行動を共にすることが多い毎日でした。

そんなママ友の中にひとり、Sさんという他のママ友に比べると少し年上の女性がいました。
「昨日たくさん作りすぎちゃったからみんなで食べてくれない?」
ある日Sさんが、手作りのクッキーをかわいらしくラッピングしたものをママ友に配りました。

Tさんが家に帰って子どもとそのクッキーを食べてみると、まるでお菓子屋さんのような本格的な味にビックリ。
「Sさんのクッキーすごく美味しかったよね! 子どもも喜んでたわ」
「どうやって作ったんだろう? レシピ知りたい!」
翌日他のママ友たちとTさんがSさんにレシピを聞こうとすると、Sさんは恥ずかしそうに答えました。
「自己流だからレシピとかなくて……もしよかったら私が作ってあげようか」
「うん、作り方が見たいから良かったらうちで作って!」
他のママ友がそう答えたのをきっかけに、お菓子作りの得意なSさんが他のママ友たちの家を順番に訪れてお菓子作り教室を開いてもらうことになりました。

なぜうちだけドーナツ?

クッキーやケーキ、パイなど、Sさんのレパートリーは豊富でしかも簡単。ママ友たちは喜んで家にSさんを招き、お菓子作り教室は大盛況でした。
しかしTさんには気になることがひとつ。
「なんでうちで教室を開くときだけ、ドーナツなんだろう?」
いつもどんなお菓子を作るかはSさんが決めるのですが、他のママ友の家ではクッキーやケーキなのに、なぜかTさんの家ではドーナツや揚げパンなどの揚げ物ばかり作りたがるのです。

確かに揚げ物は美味しいけれど準備や後片付けが大変なので、できれば他のメニューにしてほしいとTさんはひそかに思っていました。

「ねえ、なんでうちで教室するときだけいつも揚げ物なんだろう」
Tさんは一番親しいママ友と2人でお茶をしているとき、ぽろっと本音を漏らしてしまいました。
「あー、それね……」
ママ友は少しだけ声をひそめて言いました。
「他のママ友から聞いたんだけど、Tさんの家が新築でいつもキレイだから、わざと揚げ物ばっかりして油くさくしてるって言ってたらしいよ。若いのに家買ったのがうらやましいって」
「えっ、そんな理由で?」

真実は定かではありませんが、この話を聞いて怖くなってしまったTさんは、「パートに出ることになった」という理由をつけてSさんからお菓子作りを習うのはやめたそうです。

その後も付き合いの続いていたママ友に聞いたところによると、Sさんは他のママ友の新築の家でもドーナツばかり作っているのが周囲にも気づかれてしまい、お菓子作り教室は自然消滅したとのことです。

新築の家は人の羨望の的になりがちですが、揚げ物を好む理由がそれだったとしたら、少し驚きですよね。親切でお菓子作りを教えてくれていると思っていた人の思わぬ行動の理由を知ると、そのショックは計り知れませんね。美味しいはずのお菓子もほろ苦くなってしまいそうです。

【体験者:30代・女性主婦、回答時期:2025年8月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

FTNコラムニスト:齋藤緑子
大学卒業後に同人作家や接客業、医療事務などさまざまな職業を経験。多くの人と出会う中で、なぜか面白い話が集まってくるため、それを活かすべくライターに転向。現代社会を生きる女性たちの悩みに寄り添う記事を執筆。

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