筆者の体験談です。
バスに乗るとき、子どもたちが「降ります」ボタンを押したがっている姿をよく見かけます。
そんな小さな喜びを奪わないよう、私はある習慣を心がけるようになりました。
画像: 『降ります』ボタンは、子どものワクワクだから。特別な瞬間を守るため、私が心掛けている『大人の配慮』

「降ります」ボタンに全集中する子どもたち

バスや路面電車に乗ると、座席の横で「降ります」ボタンをじっと見つめる子どもの姿が目に入ります。
窓の外を流れる風景には目もくれず、まるで宝物を守るようにボタンに視線を固定しているのです。
手を伸ばすタイミングを逃さないように、体を少し前のめりにして息をひそめる子もいます。
「もう押していい?」とお母さんに聞いたり、兄弟で「ぼくが先!」と奪い合ったり。
その真剣さと小さな張り合いが、車内にちょっとした温かさを運んできます。

うっかり先に押してしまった失敗

ところがある日、私はスマホに気を取られ、次は自分の停留所だからと反射的にボタンを押してしまいました。
「次停まります」のアナウンスが響いた瞬間、目の前の男の子の表情がしゅんと曇ります。
届かないボタンをお母さんに抱き上げてもらっていたのに、私が先に押してしまったのです。
ボタンは赤く光り、車内に音が流れても、その子にとっての「特別な瞬間」はもう訪れません。

「しまった……」
ボタンを押せずに肩を落とした男の子の顔が忘れられず、ひどく気まずい思いにとらわれました。
子どもの楽しみを奪ってしまったのです。

気づいた“ボタンは特別なイベント”

大人にとっては何でもない動作でも、子どもにとっては冒険であり、誇らしい体験。
降車ボタンひとつにそんな意味が込められていることに、そのとき気づきました。

それ以来、私は必ず周りを見渡すようになりました。
小さな子がいれば譲り、時には「おばちゃん、次で降りたいから押してくれる?」と声をかけます。押せた子どもは満足そうに振り返り、お母さんが軽く会釈してくれることもあります。

小さな喜びを残すための私の習慣

ほんのささやかな気遣いですが、子どもの小さな喜びを守れるのなら、それで十分。
ワクワクと手を伸ばす子どもがいるだけで、車内の空気まで穏やかになるのを感じます。
だからこそ、日常の小さな喜びを守りたい。
それが今も続けている小さな習慣です。

【体験者:50代女性・筆者、回答時期:2025年8月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

FTNコラムニスト:Kiko.G
嫁姑問題をメインテーマにライター活動をスタート。社宅生活をしていた経験から、ママ友ネットワークが広がり、取材対象に。自らが離婚や病気を経験したことで、様々な悩みを持つ読者を元気づけたいと思い、自身の人脈や読者の声を取材し、記事として執筆。noteでは、糖尿病の体験記についても発信中。

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