仕事帰りの雨の日の夜、無言で無愛想なタクシー運転手に戸惑いと苛立ちを覚えた女性。
しかし、降車時にかけられた“ある一言”が、その夜の印象を一変させます──。
今回は筆者の友人から聞いた、心に残るエピソードをご紹介します。
画像: 無愛想すぎるタクシー運転手に思わずムッ → 降車時にかけられた『たった一言』に胸が締めつけられた夜

タクシーに乗車

これは、残業帰りの夜に出会ったタクシー運転手のお話です。

そのときは連日残業続きで疲労困憊だった私。

いつもは駅から歩いて自宅まで帰るのですが、外はあいにくの大雨。

とにかく早く休みたい一心で、最寄り駅から自宅までタクシーを使うことにしたのです。

「よろしくお願いします」
と乗り込んで行き先を告げたものの、運転手は目も合わせず、返事もなし。

そのまま無言で発車しました。

静かな運転手

タクシー運転手は道中も終始無言。

ラジオも音楽も聴くこともせず、ただ雨を弾くためのワイパーの音だけが車内に響いていました。

こちらが何か言えるような雰囲気もなく、居心地の悪さと気まずさで、ますます疲れが増していった私。

『なんだか口数の少ない運転手さんだなあ』と内心不満が積もっていました。

モヤモヤしつつも自宅に着いたので、料金を支払おうと財布を取り出したとき、ようやく彼が口を開いたのです。

真相

「今日は、家内の命日でして……」
「すみません、無愛想だったと思います」

その言葉に、さっきまで抱いていた不快感が、一瞬で消えてしまいました。

目の前の人がどんな思いでその日を過ごしていたのか、私は自分のことでいっぱいで、想像できていなかったと気づいたのです。

「そうだったのですね」
「大変な日に、ありがとうございました」

そう伝えると運転手は目に涙を浮かべ、
「十分な接客もできず申し訳ありませんでした」
と、再度深々と頭を下げてくれました。

思いやり

人は誰しも、何かを抱えて生きています。

目に見える表情や態度だけで相手を判断することの危うさを、痛いほど感じた夜でした。

自分の心に余裕がないときこそ、目の前の人を思いやることを忘れてはいけません。

車を見送ったあと、私は雨こそあがったもののまだ濡れている足元を見ながら、小さくため息をつきました。

そして『次に誰かと接するときはもっと優しい自分でいよう』と、他者への想像力を持つことの大切さを学んだ出来事でした。

【体験者:20代・女性会社員、回答時期:2025年8月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

ltnライター:一瀬あい
元作家志望の専業ライター。小説を志した際に行った女性への取材と執筆活動に魅せられ、現在は女性の人生訓に繋がる記事執筆を専門にする。特に女同士の友情やトラブル、嫁姑問題に関心があり、そのジャンルを中心にltnでヒアリングと執筆を行う。

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