筆者の話です。
瀬戸内海にある実家の島では、夏になると親族が集まり“ごちそう”を囲むのが恒例です。
でもその舞台裏では、母が奔走している姿がありました──
画像: <ごちそうの裏にある母の苦労>親族の「いいなぁ、毎日こんなの食べてるの?」に、娘がモヤモヤするワケ

親族が集う、夏の“ごちそう”時間

「毎日こんなの食べてるの? 島っていいよね〜!」
夏になると、私の実家には親族が集まり、海の幸を囲んでにぎやかに過ごすのが恒例です。
その日の朝にとれた牡蠣、アワビ、サザエ……。
まるで旅館のごちそうのような新鮮な海産物が並び、親族はおいしいおいしいと夢中で食べています。

島に来た親族たちは「島の人は毎日こんな新鮮なものを食べてるの?」と目を輝かせながら言いますが、私は内心、苦笑いしてしまいます。

その“ごちそう”は、母の努力の結晶

ごちそうを用意するために、母はずっと前から準備をしています。
漁師さんに頭を下げ、スケジュールを調整し、品物をお願いする──そんなやり取りを何日もかけて続けているのです。

最近では高齢化もあって、地元だけでは手配が難しく、母の知人を通じて隣町の漁師さんにお願いしてもらうこともあります。
暑い中を歩いて回ったり、時には収穫のない日に気まずい思いをしながら帰ってきたり。
そんな母の姿を、小さいころから見てきました。

「いつもこんな感じ?」の一言に、胸の中がざわつく

「お母さん、すごいね」「いつも珍しいものをありがとう」
そう声をかけてくれる人もいますが、大半は“これが島の暮らし”だと受け取っているように見えます。

でも、現実は違います。
こんなごちそう、ふだんは食べていません。

なのに「いいなあ、島って毎日こんな感じなんでしょ?」と当たり前のように言われるたびに、なんだかモヤモヤするのです。
せっかく母が手間ひまかけて用意したものなのに、そこを見てもらえないことが、悔しいような、さみしいような気持ちになるのです。

言えない私と、笑う母。その裏側にあるもの

それでも母は、何も言いません。
笑顔で料理を出しながら、「今日はみんなが喜んでくれてよかったね」とぽつり。

私も結局は、言い返すことなく、その場の空気を守るようにふるまってしまう。
でも、せめてこのごちそうの裏にある母の頑張りが、誰かに伝わっていれば。
そう願わずにはいられません。

たとえ言葉にされなくても、母の“おもてなし”に、誰かが気づいてくれたなら。
それだけで、少し救われる気がするのです。

【体験者:50代・筆者、回答時期:2025年7月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

ltnライター:Kiko.G
嫁姑問題をメインテーマにライター活動をスタート。社宅生活をしていた経験から、ママ友ネットワークが広がり、取材対象に。自らが離婚や病気を経験したことで、様々な悩みを持つ読者を元気づけたいと思い、自身の人脈や読者の声を取材し、記事として執筆。noteでは、糖尿病の体験記についても発信中。

コメントを読む・書く

This article is a sponsored article by
''.