デパ地下やスーパーでよく見かける試食販売。ほんの一口のサービスですが、提供する側には細かいルールと責任があるようです。これは、筆者が知人のA子から聞いた、ちょっとした出来事。でも、その「ちょっとした」判断が、大きなリスクにつながることを、彼女はこの経験から深く実感しました。
画像: 試食をあげなかった販売員を「ケチくさい」と責めた客。それでも『あげなくてよかった』と安心した理由

新人だからこそ、手を抜かずにいた

試食販売の仕事を始めて、まだ日が浅い私。新人なりに、マニュアルは何度も読み、接客も丁寧に行うように努めていました。

その日は、新商品のデニッシュパン。甘くて香ばしい匂いがあたりに漂っていて、人通りの多いスーパーの一角には、にぎやかな空気が流れています。

笑顔を絶やさず、私はいつものようにお客様に声をかけていました。

小さな男の子と、知らない女性

ふと、1人の男の子がとことこ近づいてきました。まだ4歳くらい。目を輝かせてパンを見つめています。

「パン、食べたい!」男の子はすぐにでもパンを食べたそうにしています。

私はすぐに声をかけました。「食べたいんだね。でも大人の人と一緒に来てね」

マニュアルには、子どもだけでは渡せないとあります。ルールとはいえ、ちょっとかわいそうかな……。そんな気持ちが胸をよぎったそのとき、突然横から声が飛んできました。

「欲しがってるじゃない。ひと口くらい、あげたらいいでしょ?」

声の主は、通りすがりの中年女性でした。

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