家族というかたちを持っていても、すれ違いや違和感は、日々少しずつ心に積もっていくものです。そして、ある一言がきっかけで、自分の中で何かが静かに終わることもあります。今回は、そんな体験をした友人のエピソードをご紹介します。

決定的な一言

数日後の夜、子どもを寝かしつけたあと、夫が再び涙ながらに「やり直したい」「こんなことで家族を壊したくない」とすがってきたときも、私はどこか冷めた気持ちで眺めていました。

夫の涙は、もう私の心には届かなかったのです。
私は静かに口を開きました。

「……あなたが消えてくれた方が、私の心は穏やかになれる」

まるで殴られたかのように固まる夫の顔。
言ってしまった、と思いましたが、不思議と後悔の念は一切ありませんでした。
それは、私の本心そのものだったからです。

静けさの中で

翌日、夫は何も言わずに荷物をまとめ、家を出ていきました。

もちろん、信じていた人に裏切られた痛みやショックが消えたわけではありません。
でも、それ以上に大きな安堵感が、私の心を包み込んでいました。

これから子どもを抱えてどう生きていこうか。考えるべきことは山積みです。
でも、もう夫に心をかき乱されることのない日々が始まるのだと思うと、深く息が吸えるような、不思議な解放感があったのです。

あの夜、私は夫との関係に、そして夫に振り回されていた自分自身に、別れを告げることができたのだと思います。

【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2025年5月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

ltnライター:藍沢ゆきの
元OL。出産を機に、育休取得の難しさやワーキングマザーの生き辛さに疑問を持ち、問題提起したいとライターに転身。以来恋愛や人間関係に関するコラムをこれまでに1000本以上執筆するフリーライター。日々フィールドワークやリモートインタビューで女性の人生に関する喜怒哀楽を取材。記事にしている。

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