忙しい日常の支えとなっている宅配サービス。それが思わぬ形で、ご近所トラブルの引き金になってしまったら? 今回は筆者の友人マキさん(仮名)が経験した、ある騒動とその意外な結末をご紹介します。

ところが、翌週の配達曜日。
帰宅すると、今度は別のご婦人と二人で待っていました。
「今日は何が届いたの?」「私、お醤油がちょうど切れててね」
ご婦人たちは、当然のようにふたを開けて中をのぞこうとします。声は穏やかでも、その視線は箱の中身にまっすぐ。

その次の週には、さらに増えていました。
3人、 4人と仲間を連れて、マキさんの帰宅時間に合わせてぞろぞろと現れたのです。

やがて、配達日に合わせてインターホンまで鳴るようになりました。
「なにか、余ってるものない?」「これ、おすそ分けってことでいいのよね?」

言葉づかいはやさしくても、もう気軽に受け流せる雰囲気ではありません。
マキさんは、玄関先に立つたびにコソコソするようになってしまいました。

荷物を入れるだけのはずが、どうしてこんなに神経をすり減らすんだろう。そんなふうに思うようになっていました。

助けて、ドライバーさん!

午後、久しぶりに半休を取れた日。
ちょうど荷物を受け取るタイミングで、いつものドライバーさんがやってきました。マキさんは思いきって声をかけます。

「あの、ちょっと困っていて、ご相談してもいいですか?」

ご婦人たちが毎週マキさんの宅配荷物を楽しみにしていること。次第に人数が増え、断りづらくなってしまったと打ち明けました。

話を聞いたドライバーさんは、目を見開いて少し驚いた様子で言いました。
「えっ、そうでしたか……。対応、考えてみますね。お任せください」
数日後の配達日、玄関前は静かでした。インターホンも鳴らず、ご婦人たちの姿も見当たりません。

しばらくして、ご婦人のひとりがマキさんに声をかけてきました。「あなた、助かってるのよ! うちにも来てくれるのよ。ありがとう」

何のことかと詳しく聞いて、マキさんも驚きました。

ドライバーさんが配達のついでにご婦人たちを見かけては、声をかけて部屋を訪ね、注文の仕方やサービス内容を丁寧に案内してくれていたそうです。必要があれば、その場で注文も受け付けてくれるとのことでした。

頼れる味方がいる安心感

「あの頃は、トイレットペーパーも、お味噌も、みんな買われちゃうんじゃないかって思ってました」

マキさんは、少し笑いながら当時を振り返ってくれました。
玄関先で荷物を隠すように抱えていた日々。
ほんのひとつのおすそ分けが、まさかあんな展開になるとは。今では、ちょっとした笑い話です。

でも今は、玄関前は静か。
ご婦人たちはそれぞれ自分のペースで注文をするようになり、配送日はドライバーさんが訪ねてきてくれるのを楽しみにしているそうです。

「最近は、みなさんお友達同士で買ったものを見せ合ったり、交換したりしてるらしいんです」
マキさんは、少し驚いたように笑って話してくれました。

誰かを頼ることで、新しい交流が生まれることもある。
それを後押ししたのは、マキさんの勇気とドライバーさんのやさしさだったのかもしれません。

本当に、宅配サービスって頼れる。
マキさんは今、改めてそう感じているそうです。

【体験者:40代・会社員、回答時期:2024年10月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

ltnライター:神野まみ
フリーランスのWEBライター・コラムニスト。地域情報誌や女性向けWEBメディアでの執筆経験を活かし、医療・健康、人間関係のコラム、マーケティングなど幅広い分野で活動している。家族やママ友のトラブル経験を原点とし、「誰にも言えない本音を届けたい」という想いで執筆を開始。実体験をもとにしたフィールドワークやヒアリング、SNSや専門家取材、公的機関の情報などを通じて信頼性の高い情報源からリアルな声を集めている。女性向けメディアで連載や寄稿を行い、noteでは実話をもとにしたコラムやストーリーを発信中。

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