毎朝の満員電車、押しつぶされるようなあの圧。通勤がつらいと感じたこと、ありませんか? 今回は、筆者が会社勤めをしていた頃に実際に体験した出来事です。
画像: 医師「思い当たることは?」→ 私「、、、満員電車です」医師も絶句した【左胸の痛み】の原因とは

いつもの通勤電車

会社勤めをしていた頃、朝の通勤電車は毎日がサバイバルでした。
駅に着いた瞬間から、気持ちはすでにどんより。人の波に押され、改札を抜ける頃には、じんわり汗。

電車がホームに滑り込んできたと同時に、列が一気に押し出される。
「押さないで!」と思いながらも、もはや自分の意思では動けません。

ギュウギュウに詰め込まれた車内。片手は吊り革に届かず、背中に誰かのカバンが食い込む。
何度か、足を踏まれた。でも、文句なんて言えない。みんな、イライラしているのがわかるから。

それでも、「仕方ない、働くとはこんなものだ」って自分に言い聞かせていたんです。
そうやって、毎日をやり過ごしていました。

あの日も、いつものように耐えた数駅。
ようやく最寄り駅に着いて、ドアが開いた瞬間、車内の人たちが一斉に駅のホームへなだれ込むように降りていく。
その流れに押されながらホームに出たときでした。

ズキン――左胸に、鋭い痛みが走ったのです。

痛みの正体

以前、似たような痛みで病院に行ったとき、「肋間神経痛でしょう」と言われたことがありました。だから今回も、それだと思い込んでいたんです。

でも、会社に着いても、脇腹の上、胸の下あたりがズキズキと痛む。
深呼吸するとズキンとくる。笑っても咳をしても恐ろしく響く。
そのうちに変な汗がおでこにじっとりとにじみ出てきました。

「顔色が悪いけど、大丈夫か?」
隣の席の上司が、心配そうに声をかけてくれました。
そのひと言で、自分でも「あ、これ、ダメかも」と思ったんです。

昼前に早退して、病院へ。
レントゲンを撮って、診察室に戻ると、医師がモニターをじっと見つめたまま、しばらく黙っていました。
その沈黙が、やけに長く感じたんです。

やがて、指をさしながら、医師が静かに口を開きました。

「ああ、ここですね。分かりますか? 骨、折れてます」
「強い力で圧迫されるような心当たりありますか? 肋骨、折れていますよ」

圧迫? 折れてる?
一瞬、頭が真っ白になりました。瞬時に記憶をたどっていく。

「あっ、満員電車です!」

声に出してから、じわじわ実感が追いついてくる。
まさか、あの“ズキン”が骨の悲鳴だったなんて

決断のとき

まさかの骨折。
頭に浮かんだのは、翌週に控えた海外出張でした。

「飛行機は絶対ダメですよ」
医師にそう言われても、スケジュールはすでに確定。
同行する上司の予定も詰まっていて、簡単には断れません。

どうする、自分。
悩みに悩んで、結局“行く”と決めました。
胸にコルセットをギュッと巻き、痛み止めと診断書をバッグに入れて。
息をするたびに響く痛みに耐えながら、空港へ向かいました。

出発当日。
待ち合わせた上司が私の顔を見て言いました。
「無理してないか?」

「大丈夫です」
そう答えたとき、額にはもう脂汗がにじんでいました。

「俺のマイル、たまってたからさ。ファーストにしておいた」

上司が言ったその一言に、涙がにじみそうになりました。
声には出さなかったけれど、あのときの優しさは、今でも忘れられません。

あのとき、我慢していたら

脂汗をかきながらも、何とか無事に帰国できました。
上司の気づかいがなければ、正直どうなっていたかわかりません。

あのとき、いつもの神経痛だと思い込んでいたら。
痛みに耐えたままエコノミークラスで長時間フライト。
出張先の海外でついに悲鳴を上げて、現地の医療機関にかかって……
気づけば、医療費という名の“とんでもない借金”を背負っていたかもしれません。

自己判断で我慢していたら、そう思うと、今でもゾッとします。

【体験者:40代・WEBライター、回答時期:2025年5月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

ltnライター:神野まみ
フリーランスのWEBライター・コラムニスト。地域情報誌や女性向けWEBメディアでの執筆経験を活かし、医療・健康、人間関係のコラム、マーケティングなど幅広い分野で活動している。家族やママ友のトラブル経験を原点とし、「誰にも言えない本音を届けたい」という想いで執筆を開始。実体験をもとにしたフィールドワークやヒアリング、SNSや専門家取材、公的機関の情報などを通じて信頼性の高い情報源からリアルな声を集めている。女性向けメディアで連載や寄稿を行い、noteでは実話をもとにしたコラムやストーリーを発信中。

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