筆者の知人の話です。寡黙な父との距離を埋められぬまま、大人になったC美。
遺品整理中に、かつて父と交わしていた交換日記を見つけます。
ページをめくったC美が見たのは――?

懐かしいような、気恥ずかしいような気持ちでページをめくっていると、私が投げ出したあとも、父は日記を律儀に続けていたことに気づきました。

「中学、おつかれさま。進路に迷うこともあるけど、君ならきっと大丈夫」
「新しい暮らしには慣れたかな。体に気をつけて」

そこには、あの頃から今日までの私に向けた、励ましと応援の言葉がたくさん綴られていたのです。

最後の贈り物

ページをめくるたびに、涙が止まらなくなりました。
あのとき私が日記をやめてしまったことで、父は私に言葉を直接伝える手段を失っていたのかもしれません。

それでも、言葉を綴ることだけは続けてくれていた。
生きているうちに、もっと話せばよかった。
もっと、父の想いを知ろうとすればよかった――。

不器用でも、言葉にする努力をしてくれていた父の気持ちを、ようやく受け取れた気がします。
気づくのが遅すぎたけれど、この日記は父からの最後の贈り物になりました。

【体験者:30代女性・会社員、回答時期:2025年4月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

ltnライター:大城サラ
イベント・集客・運営コンサル、ライター事業のフリーランスとして活動後、事業会社を設立。現在も会社経営者兼ライターとして活動中。事業を起こし、経営に取り組む経験から女性リーダーの悩みに寄り添ったり、恋愛や結婚に悩める多くの女性の相談に乗ってきたため、読者が前向きになれるような記事を届けることがモットー。

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