親との関係が心に影を落とし続けている──。そんな思いを胸の奥にしまいながら、日々を懸命に生きている人は少なくありません。特に親の立場になると過去と向き合う場面が増えていくものです。
今回は、苦しい家庭環境を生き抜き、自分らしい幸せをつかんだ筆者の知人A子の話をご紹介します。
画像: 毒親「あんたなんか産まなきゃよかった」心の傷に怯える私を救ってくれた『夫と我が子との日々』

「産まなければよかった」の言葉が残した傷

子どものころ、私はいつも親の顔色を伺って過ごしていました。ちょっとしたきっかけで怒鳴られ、「あんたなんか産まなければよかった」と突き放される日々。その言葉は、心に深い傷を残しました。
高校を卒業するとすぐ家を出て、一人暮らしを始めました。朝から晩まで働いても生活はギリギリ。でも自由に呼吸できるような毎日でした。職場や近所の人の優しさにも支えられ、貧しくても、心は少しずつ満たされていきました。

出会いがもたらした安心感

そんなとき出会ったのが、後に夫となる彼でした。ゆっくりと距離を縮め、私の過去を打ち明けると、彼はいつも黙って受け止めてくれました。

数年後、私たちは結婚し、子どもを授かりました。妊娠中、不安を口にした私に、彼は「大丈夫。君は君の母親とは違う。」と優しく言ってくれました。その言葉に、胸がじんと熱くなったのを覚えています。

子育てで癒される心

子どもが生まれてからも、ふとした瞬間に過去の記憶が蘇り、不安に駆られることがありました。

泣き声にイライラすると、「自分もあの親と同じになるのでは」と怖くなるのです。

それでも、夫がいつもそばで支えてくれ、一緒に子育てをしてくれました。わが子を抱きしめ「大丈夫だよ」と語りかけるうちに、心の奥にあった傷が少しずつ癒やされていくようでした。

「うちの子、今の私に必要なことを全部教えてくれてる気がする」

とこぼすと、夫は

「子育てって、親育ても含まれてるよな」

と笑ってくれました。夫婦で笑いながら、気づけば目に涙が浮かんでいました。

親への見方が変わる、新たな一歩

両親のような親にならずに済んだのは、夫や周りの人の支えがあったからこそだと思います。

両親を完全に許せたわけではありません。でも、自分が親になって初めて、「あの人たちも苦しかったのかもしれない」と感じられるようになりました。

今、夫と子どもと一緒に笑い合える毎日を大切にしながら、過去にとらわれず、自分の人生を少しずつ取り戻しています。

【体験者:40代・女性主婦、回答時期:2025年3月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

ltnライター:Yumeko.N
元大学職員のコラムニスト。専業主婦として家事と子育てに奮闘。その傍ら、ママ友や同僚からの聞き取り・紹介を中心にインタビューを行う。特に子育てに関する記事、教育機関での経験を通じた子供の成長に関わる親子・家庭環境のテーマを得意とし、同ジャンルのフィールドワークを通じて記事を執筆。

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