子どもがまだ小さいうちは、外食に行っても大人と同じものが食べられず、別のメニューを注文することもあるでしょう。今回はそんな子連れの外食の際、意外なトラブルに巻き込まれた経験のある筆者の知人、Hさんのお話です。

義父の言葉に……

「なんだこれは!」
義父はお子様ランチを見るなり、大声をあげました。個室とはいえ、店内に響くような大声でした。
「日本人なら和食を食べさせろ! いつも子どもにこんなもの食べさせてるのか、お前たちは!」
「まだ食べられないんだから仕方ないだろ!」
「そうよ、好きなもの食べさせてあげなさいよ」
旦那さんと義母が義父をたしなめましたが、興奮した義父は止まりません。
「こんなもの、その辺でも食べられるだろ! こんなものばっかり食べてると舌がバカになるぞ!」

義父が息子の手からお子様ランチを取り上げようとすると、「失礼いたします」という言葉と共にすっと個室の襖が開きました。
「お子様ランチにお付けしているゼリーを忘れていました、大変申し訳ございません」
小さなゼリーを持ってきてくれたのは、あきらかに貫禄のある、板前らしき男性。
「わたくし、料理長の〇〇と申します」
「まあ、料理長さんが直々にすみません」
義母が慌ててお礼を述べると、料理長はチラッと義父を見て言いました。
「こんなもので申し訳ございません、それでもお子様にも喜んで欲しいと心を込めて作ったものです。召し上がって頂ければ幸いです」

料理長は軽く頭を下げてその場を去り、義父は急に気まずくなったのか息子にお子様ランチを返し、黙って食事をしたそうです。

料理長さんの静かで毅然とした対応は、食事の場における『おもてなしの心』の重さを義父に深く理解させるのに十分だったようです。

お店の方には大変ご迷惑をおかけしましたが、この経験を通じて、義父も他者の心遣いや配慮に敬意を持つことの大切さを学んでくれたのではないでしょうか。

せっかく家族みんなが揃う席なのですから、互いに感謝と配慮を忘れず、食事の時間を楽しく過ごしたいものですね。

【体験者:30代・女性主婦、回答時期:2024年9月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

ltnライター:齋藤緑子
大学卒業後に同人作家や接客業、医療事務などさまざまな職業を経験。多くの人と出会う中で、なぜか面白い話が集まってくるため、それを活かすべくライターに転向。現代社会を生きる女性たちの悩みに寄り添う記事を執筆。

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