介護の現場では毎日思いがけないハプニングが起こり、人と接することの複雑さや奥深さを改めて実感すると介護経験者に聞いたことがあります。今回は介護施設に入所している女性たちが皆ニコニコとご機嫌になったある出来事に遭遇した経験のある筆者の知人、Mさんのお話です。
画像: 介護施設で「家に帰りたい」毎日泣いていた女性もニコニコ!「綺麗ねぇ」と喜んでくれた理由

面会にきたお孫さん

Mさんは当時サービス付き高齢者向け住宅で、介護スタッフとして勤務していました。

ある日ひとりの女性入所者さんのもとに、お孫さんが面会にやってきました。
「わあ、キレイねえ」
談話スペースに、入所者さんの楽しそうな声が響いたのでMさんは何かと思い、見に行ってみました。

「見て、Mさん」
その入所者さんはMさんに両手の爪を見せてくれたのです。
「あら、ほんとにキレイ」
入所者さんの両手の爪には淡いピンク色のマニキュアが施されていました。
「私、ネイリストなんです」
お孫さんはマニキュアの瓶を何本かMさんに見せました。それは剥がせるタイプのマニキュアで、除光液を使わずに落とすことができるというものでした。

他の入所者さんもニコニコ

「いいわねえ、その爪」
他の女性入所者さんたちがそれを見に来て口々に褒めるので、お孫さんは他の女性にも塗ってあげると言って、次々にマニキュアを施し始めました。
「どの色がいいですか? これなんか似合いそう」
「ほんと? じゃあこの色にするわ」
そう答える女性入所者さんは、まるで初めてマニキュアを塗ってもらう少女のようにウキウキとした顔つきになっていました。

その日マニキュアしてもらった女性入所者さんたちは皆ニコニコと笑顔で、キレイになった爪を眺めていました。

「ほんとにキレイだわ、嬉しい」
認知症で色々なものに興味を失っていた女性も、最近入所して「家に帰りたい」と毎日泣いていた人もご機嫌。

Mさんは女性たちの笑顔を取り戻してくれた、マニキュアの力にビックリ。

それからMさんは度々女性入所者さんとお化粧やネイルなど、オシャレの時間を定期的に作るように施設に提案しました。

入所者さんのご家族に元化粧品販売員やネイリストさんがいたので、協力してもらってオシャレの時間はとても盛り上がったそうです。

キレイでいたいという、女性のオシャレ心はいくつになっても健在なんですね。

【体験者:40代・女性介護福祉士、回答時期:2024年7月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

ltnライター:齋藤緑子
大学卒業後に同人作家や接客業、医療事務などさまざまな職業を経験。多くの人と出会う中で、なぜか面白い話が集まってくるため、それを活かすべくライターに転向。現代社会を生きる女性たちの悩みに寄り添う記事を執筆。


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