お通夜やお葬式の席には故人を偲んで多くの人が弔問に訪れますが、中には一度も顔を合わせたことのない人もいて、「この人は一体……」と思うこともあるのではないでしょうか。今回は私が祖父のお通夜の場で、意外な弔問客に出会った経験談をお話しします。

男性の正体とは

ついにその男性が焼香をする番になり、男性は親族席に向かって深々と頭を下げます。近くで見てもなお、祖父と瓜二つの顔に親戚一同がぽかんとしてしまいました。

「すみません、ちょっといいですか?」
通夜の後、そっと帰ろうとするその男性を私が引き止めました。こんなに祖父とそっくりな人が一体誰なのか、気になったからです。

「あの、祖父とはどういった……」
私の言葉に、その男性は祖父と全く同じ顔で微笑みました。
「〇〇さん(祖父の一番上の兄)の代理でやってまいりました。故人とは双子の兄弟という関係になります」
「え、おじいちゃん双子だったんですか!?」
その男性が言うには、祖父とその男性は双子として産まれてきたものの、祖父の故郷では双子は縁起が悪いと言われていたため、その男性は産まれてすぐに養子に出されたというのです。

つまりその男性は、祖父の生き別れの双子の弟。

祖父の一番上の兄はずっとその男性のことを気にかけていて、連絡を取り合っていたため、今回祖父の訃報を聞いて代理で来てくれたのでした。

「全然知らなかった……」
いつの間にか傍にいた父も、祖父が双子だったことを知らなかったそうです。

なおその男性は案外近くに住んでいたため、翌日の葬儀にも参列してくれることになりました。

そして事情を知らない参列者の「亡くなった人が生き返った!」という声が斎場に再び響き渡ったのでした。

双子は遠く離れて暮らしていても、なぜか同じ髪型や体型になっていることがあると聞きます。祖父とその男性も全く同じ髪型と体型だったので、双子の強い絆を感じました。

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

ltnライター:齋藤緑子


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