不妊で悩んでいるうちに時間が過ぎ、どんどん焦ってしまって精神的に追いつめられるという人も多いですよね。
今回は身近に不妊で追いつめられてしまった人がいて、一家を巻き込む大騒動になってしまったRさんのお話です。

義兄の無精子症が発覚

Rさんは幼稚園の子どもと旦那さんとの3人家族。旦那さんには3つ年上のお兄さんがいるのですが、お兄さん夫婦はなかなか子どもが授からず、不妊治療の病院に行き始めたばかりのことでした。

「ちょっと大事な話があるから、実家に集まってくれる?」
義兄の奥さん、つまり義理のお姉さんにそう言われ、Rさんと旦那さんは実家に赴きました。旦那さんの実家では義両親と義兄夫婦が同居しています。

「今日は来てくれてありがとう。実は…」
皆が集まったところで、義兄が重い口を開きました。
「俺、無精子症だから子どもができないらしい」
「え…」
Rさんと旦那さんはかける言葉もなく、ただ驚くばかりでした。
「それで、〇〇(旦那さん)にお願いがあるんだ」
「…なに?」
言いにくそうな義兄の代わりに、義姉が口を開きました。
「あのね、私に〇〇くんの精子くれない?さすがに私も長男の嫁だし、後継ぎを作りたいの。〇〇くんならうちの旦那によく似てるし、うちの旦那の子って言ってもいいと思うのよ」
「…は?」
絶句するRさんと旦那さん。
「なあ、いいだろ、〇〇。出したやつをくれればいいだけだからさ。シリンジ法って言って、スポイトで入れる方法があるんだよ」
義兄がそう言って、その後ろでは義両親もうんうんとうなずいています。

そんな簡単にやれるか!

「え、そうなんだ…どうしよう」
義兄夫婦と両親に頼まれ、迷うRさんの旦那さん。Rさんは頭のどこかでプチっと切れる音が聞こえたそうです。
「どうしようもクソも、なんでみんなうっすら納得してんの!?便宜上いとこ同士で実は腹違いの兄弟なんて、許せるわけないでしょうが!!!」
いつもおとなしいRさんの剣幕に、皆驚いて口もきけない様子。
「あと、もし生まれた子がそれを知ったら、どんな思いをするか考えてみなよ!もう話になんない、帰ります」
Rさんは子どもの手を引き、義実家を後にしました。あわてて追いかけてくるRさんの旦那さん。
「ごめんごめん、なんかあんまりにも兄貴たちが真剣だからさ…」
「…お義姉さん、お義父さんとお義母さんに孫を見せろって言われて焦ってるんじゃないの?義理の弟に精子くれって言いだすくらい悩ませた人にも問題あると思うよ、私」
「そうだよな…ちょっと俺、話し合ってくるから先帰ってて」
「うん、わかった」
実はRさんの子も、不妊治療の末に授かった子でした。だからこそRさんには義姉の苦悩や焦燥がよくわかったのだそうです。

結局旦那さんが義実家でよく話し合い、精子を提供する話はナシになったとのこと。しばらくしてRさんが義姉に会った時にはきちんとした謝罪をされたようです。
「ごめんなさい、どうかしてた。はっきり言ってくれて本当にありがとう」
「いいんですよ、気持ちはよくわかるから」
それから義兄夫婦は義両親との同居を解消。今はゆったりと2人暮らしを楽しんでいるとのことです。

ftnコラムニスト:緑子

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