旦那さんの残業が続いたら、よっぽど疑わしいことがない限り体調を心配するのが普通の奥さんですよね。今回は残業続きの旦那さんを労わろうとしたら、予想外の事態が起きてしまったTさんのお話です。
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残業続きの夫

Tさんの旦那さんは小さなデザイン会社を経営しています。年末に近づくにつれて仕事が忙しくなり、旦那さんが残業続きになるのは毎年恒例。その年も同じで、旦那さんは毎日夜遅くに帰って来て、Tさんがパート、子どもが学校に出かけてから旦那さんが起きて出社するというすれ違いの日々が続いていました。

Tさんには7歳になったばかりの娘さんがひとり。いつも自分が寝た後にパパが帰ってくるのでなかなか顔を合わせて話すことのできない寂しさから、急に泣き出したりイライラしたりと少し情緒不安定になっている様子でした。
「ねえママ、クリスマスはパパ、早く帰ってきてくれるかな」
「そうねえ…お仕事が落ち着いてたら」
そう言って娘さんをなだめながらも、Tさんはこのまますれ違いの日々が続いていては娘のためにも良くないと思っていたのでした。

母子2人だけのクリスマス

娘さんが楽しみにしていたクリスマスの夜。その日も旦那さんは仕事で遅くなるという電話一本をよこしただけ。クリスマスくらいは家族3人で過ごせると思っていた娘さんは、悲し気にローストチキンを頬張っていました。
「サンタさんがくれたプレゼント、パパに見せたかったな…」
娘さんがその年サンタさんにお願いしたのは、好きなキャラクターのデザインされた腕時計。これもTさんが娘さんのためにこっそり用意したものでした。
欲しかったものを手に入れたのにあまりに寂しそうな娘さんの様子に胸が痛み、Tさんはある提案をしました。
「じゃあパパに見せに行こう!パパもお腹が空いてるだろうし、おにぎりとお味噌汁作って持って行ってあげようね」
「うん、そうする!」
そうしてTさんと娘さんは旦那さんのために夜食のおにぎりを握り、熱々のお味噌汁を作ってスープジャーに入れました。

旦那の会社に到着!しかし…

Tさんと娘さんは車で旦那さんの会社へ向かいました。旦那さんを驚かせたくて、あえて連絡はせずに。
「着いた!パパー!!!」
会社の近くに車を停め、Tさんは娘さんと旦那さんの会社へ。旦那さんの会社はビルの3階に入っているので、ウキウキとエレベーターで上がっていった2人。
「パパびっくりするかな?喜んでくれたらいいな!」
娘さんはおにぎりの詰まったバスケットを抱いてニコニコと楽しそうに笑っていました。

エレベーターが3階に着き、ゆっくりとドアが開きます。一歩踏み出して、Tさんと娘さんは異変に気付きました。
「あれ…なんか暗くない?」

3階には旦那さんのオフィスしかないので、旦那さんがまだ残って仕事をしているなら電気がついているはず。それなのに3階のフロアはエレベーター付近の灯りのみがついていて、それ以外は真っ暗。静まり返っていて、人っ子一人いない様子でした。
「…どういうこと?」
「パパー!なんでいないの?」
Tさんと娘さんはしばらく呆然として、その場に立ちすくんでいました。

電話してみると…

「ちょっとママ、パパに電話してみる」
「うん…」
娘さんはがっかりした様子を隠せず、力なくうなずきました。Tさんはまさかと思いながら、スマホから旦那さんに電話をします。
「…もしもし?今仕事中なんだけど、どうした?」
電話の向こうから、不機嫌そうな旦那さんの声。
「あっそう、仕事ね…。ってどこで仕事してんのよ?」
「どこって…会社に決まってるだろ?」
「その会社に今いるのよ、私たち。真っ暗だけど、あなたこんなとこで仕事してるの?いるなら早く出てきてよ!」
「え…なんで…!」
旦那さんの声が、明らかに慌てた様子に変わります。
『〇〇さん(旦那さん)、どうしたのー?』
電話の向こうで、旦那さんを呼ぶ若い女性の声。Tさんは震える手で、そのまま電話を切りました。

「ママ、パパはどこにいるの?」
不安げに尋ねる娘さんに、Tさんは「パパは今お仕事の人とご飯食べに行ってるみたい。多分すぐ帰ってくると思うから、おうちで待ってようね」としか言えませんでした。
「なーんだ、せっかくおにぎり作ったのに…」

その後Tさんと娘さんが自宅に戻ると、すぐに慌てた様子の旦那さんが帰ってきました。
「パパおかえり!メリークリスマス!」
パパがいるクリスマスにはしゃぐ娘さん。Tさんは「話はあとで。とりあえずケーキ食べましょ。もうご飯は済ませたんでしょ?よそで」と言ってケーキを切りました。

「ごめん…本当に悪かった」
娘さんが寝付いた後、旦那さんはTさんに頭を下げました。
「残業なんて、嘘だったのね。あの子がどんなに寂しかったと思う?」
「忙しかったのは本当なんだ、それで…」
「それで、癒しを若い女の子に求めちゃったの?」
「…すまない…」
問い詰めてみると、Tさんが電話をした時、旦那さんはアシスタントの若い女性の部屋にいたとのことでした。その女性とはもちろん男女の仲で、時々泊まっていくこともあったそう。
「もう彼女には会わない、会社も辞めてもらう」
「本当かしら、どうせまた会うんじゃないの?家族ほったらかしてクリスマスを一緒に過ごすくらいなんだし」
「いや、もう終わりにするよ…」
2人で会社に行って、誰もおらず真っ暗だったあの時。どれだけ2人が寂しく、不安な思いをしたか。Tさんは次に同じことがあれば離婚をする、もう少し大きくなれば娘も事情が分かる年齢になる、ということをきつく旦那さんに言い含め、今回だけは浮気を許すことにしました。

それからTさんは旦那さんの残業が続くと抜き打ちで会社に突撃しているそうですが、それ以降はちゃんと会社で仕事をしているようです。それでも一度裏切られた悲しみが忘れられず、今でもクリスマスになると苦い思い出がよみがえるとのことです。

ftnコラムニスト:緑子


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