筆者の知人Aの話です。
定時で帰るようになった夫との暮らしに、少しずつ違和感が生まれました。
思い描いていた老後とのズレに、Aはどう向き合ったのでしょうか──。

帰宅の変化

「ご飯は? お腹すいた」
役職定年を迎えた夫は、それまでの生活が一変し、午後4時や5時には家にいるようになりました。
転勤族で単身赴任も長く、同居していても深夜帰宅が当たり前だったため、私にとってその変化は想像以上に大きなものでした。

増える違和感

パートから帰ると、すでに夫はテレビの前に座っています。
「おかえり」と声をかけられることもあれば、そのまま画面に視線を向けたままのこともあります。

バッグを置き、エプロンをつけて台所に立つ。
冷蔵庫を開けて食材を取り出し、包丁を動かしながら、ふと振り返ると同じ姿が目に入ります。
これまでなら気にも留めなかった光景なのに、なぜか胸の奥に小さな引っかかりが残るようになっていきました。

積もる思い

「ご飯は?」「お腹すいた」
その言葉を聞くたびに、少しだけ手が止まります。
待ちきれずにお菓子に手を伸ばす夫。
急いでご飯を作ろうとしているのに……。