その背中をぼんやりと見送りながら、私の中でひとつの考えが生まれました。「叱るのではなく、きちんと向き合わなければ。それが彼らのためにもなるはずだ」と。
次の週に入り、私は準備を整えて待つことにしました。
ピンポンダッシュはいつも夕方16時から17時の間の時間帯に起きていました。
まもなく、学校帰りのあの子達が廊下に現れる時間です。
私はインターフォンのモニターの前に椅子を置き、本を読みながら待機しました。
そして「ピンポーン」とインターフォンが鳴りました。
モニターには誰も映っていません。
私はすぐには動かずにドアを開けるタイミングをずらしました。
子ども達がピンポンダッシュの成功を喜び、笑いながら階段へ向かいかけた瞬間を見計らい、私はドアを開けました。
解決
「あら、ちょうどよかった」
私が声を掛けると廊下に3人の小学生が固まっていました。
その顔には、驚きと焦りが入り混じっていました。
私は穏やかに言いました。
「インターフォン、押してるの気づいてるよ。カメラに音も全部記録されてるんだけど、知ってたかな?」
少々、誇張を含んでいましたが、彼らに事の重大さを理解してもらうための、私なりの「抑止力」でした。
「やばい……」という声が漏れてきます。
私は続けました。
「またイタズラでインターフォンを鳴らしたら、この記録を持って管理会社に相談しようと思っています。そうすると君達のお父さんとお母さんも呼ばれることになるんだけど、いいかな?」
3人は顔を見合わせ、そろって「すみませんでした」と頭を下げました。
私は「わかってくれればいいよ。気をつけて帰ってね」とだけ言って、ドアを閉めました。
それ以来、ピンポンダッシュはピタリと止まりました。
廊下を走る音や声も、静かになりました。
向かいの男の子とは、たまに廊下で顔を合わせることがあります。
最初は目をそらしていましたが、最近は「こんにちは」ときちんと挨拶もするようになり、私もにこやかに返しています。
集合住宅での近隣トラブルは、誰にでも起こり得ます。
そんな時は感情的にならずに冷静に対応することが、お互いにとって最善の解決に繋がるのだと教えてくれました。
【体験者:50代・筆者、回答時期:2026年4月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
FTNコラムニスト:藍沢佑菜
管理栄養士の資格を持つ、2人の自閉症男子のママ。自身の育児環境の変化をきっかけに、ライター活動をスタート。食と健康を軸に、ライフスタイル全般のコラムを得意とし、実体験に基づいたリアルな記事を執筆中。専門的な情報を「わかりやすく、すぐに日常に取り入れられる形」で伝えることが信条。読者の「知りたい」に寄り添い、暮らしを整えるヒントを発信しつづけている。