妊娠初期、つわりが重くなり実家に戻った筆者。ようやく静かに休めると思った矢先、朝7時に聞こえる“ある音”に悩まされます。当時は辛かったその出来事を、今は少し違う気持ちで振り返っています。
辛い吐き気
妊娠が分かってしばらくした頃、つわりが一気に重くなりました。仕事はもちろん、家事もほとんど手につきません。
水を飲んでも吐き気に襲われ、そのまま動けなくなる日もありました。
夫と暮らしていたマンションは狭く、彼がキッチンで食事の準備を始めると、匂いだけで気分が悪くなります。夫が食事をしている間も、私は別の部屋でこらえるしかありませんでした。
限界を感じて、実家に戻ることにしました。実家では自分の部屋にこもり、扉を閉めて匂いを抑えることができました。
そのおかげで、少しだけ呼吸がしやすくなりました。
朝7時の音
ところが、そこで別のことに悩まされるようになります。
隣の家から、響く乾いた音。
「カンッ!」
「カンッ!」
思わず身を起こしました。
「え!? なに?」
工事? 事故? それとも何か落ちた? 重たい体を起こし、そっとカーテンの隙間から外をのぞきました。
音の正体
すると、隣の庭で男性がクラブを振り、ボールを打っている姿が見えました。
ゴルフ……?
一瞬、状況が飲み込めませんでした。
朝7時に、庭でゴルフの練習。
そうか、なるほど。
再び布団に戻りましたが、カンッ、という音が一定のリズムで響きます。
一度では終わりません。二度、三度。どうやら一球ごとに丁寧に構え直している様子です。時計を見ると、まだ7時を少し過ぎたところ。
せめて短時間で終わってほしい。そう願いながら、布団の中で身を縮めました。
15分ほど続いたでしょうか。ようやく音が止み、庭が静まり返った瞬間、私は小さく息を吐きました。
ああ、終わった。
それだけで、ほんの少し救われた気持ちになりました。