筆者の話です。4歳年上の優しい従兄は、一緒にお風呂に入り、手作りクッキーをご馳走してくれる憧れの存在でした。しかし祖母の急逝を機に突然転校し、音信不通に。数十年後、祖父の葬儀で再会した従兄が語った真実とは。家族の確執が一人の少年の人生を変えた切ない物語です。

数十年ぶりの再会

それから、何十年も音沙汰なく過ごしました。

私も大人になり、従兄のことは時々思い出すものの、もう会うことはないだろうと思っていました。

そんなある日、父方の祖父の葬儀で従兄と再会しました。

「久しぶり」

従兄は、少し疲れた顔をしていましたが目は優しかったです。

「本当に久しぶりだね」

私も、涙が出そうになりました。

葬儀が終わった後、私は従兄と少し話す機会を持ちました。

「あの時どうして急に転校しちゃったの?」

私は、ずっと聞きたかったことを聞きました。

従兄は、少し考えてから、ゆっくりと話し始めました。

明かされた真実

「祖母が亡くなった後、祖父が俺たち家族を追い出した」

「祖父は、俺の父親(私の伯父)のことが気に入らなかったらしい。祖母が生きている間は、祖母が間に入ってくれてたから、何とかやってこれた。でも、祖母が亡くなった途端、『出て行け』って言われて」

「急に引っ越すことになって、中学も転校。転校先では、『どうせすぐ辞めるだろう』って、いじめられた」

そして、従兄は意外なことを話し始めました。

「それで高校の時、俺、暴走族やってたんだ」

「暴走族?」

「うん。あの時、居場所がなくてさ。家に帰っても、両親は喧嘩ばかり。学校でもいじめられて。そんな時、同じような境遇の奴らが暴走族の仲間が『お前、仲間になれよ』って声かけてくれて」

従兄は、少し苦笑いしました。

私は、驚きました。

あんなに優しく、繊細で、お菓子を作ってくれた従兄が、暴走族をしていたなんて。

誰からも必要とされない孤独の中で、彼は必死に自分の居場所を探していたのかもしれません。決して褒められた過去ではないかもしれませんが、当時の彼にとってはそれが唯一の縋れる場所だったのだと、話を聞きながら胸が締め付けられました。

それでも、私が見た再会した彼の瞳は、あの頃と変わらず穏やかでした。過酷な環境に身を置きながらも、彼は根底にある優しさを捨ててはいなかったのです。

「今は?」

私が聞くと、従兄は答えました。

「今は、まあ、何とかやってるよ。ちゃんと仕事してる」

従兄は、穏やかに笑いました。

私は、数十年ぶりに従兄と再会できて、本当に良かったと思っています。

もし、祖父の葬儀がなければ、もう二度と会うことはなかったかもしれません。

再会できた今、私は従兄との関係を大切にしていきたいです。

【体験者:50代・筆者、回答時期:2026年2月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

FTNコラムニスト:藍沢佑菜
管理栄養士の資格を持つ、2人の自閉症男子のママ。自身の育児環境の変化をきっかけに、ライター活動をスタート。食と健康を軸に、ライフスタイル全般のコラムを得意とし、実体験に基づいたリアルな記事を執筆中。専門的な情報を「わかりやすく、すぐに日常に取り入れられる形」で伝えることが信条。読者の「知りたい」に寄り添い、暮らしを整えるヒントを発信しつづけている。