春はどこへ行っても「卒業」や「入学」の話題であふれます。街もどこかそわそわとした空気に包まれる季節。けれど、その輪の外にいるように感じる人も、きっと少なくないはずです。今回は筆者の知人の体験談をお届けします。

小さな疎外感

私が働く部署は、お子さんがいる社員が多く、3月から4月にかけては卒業や入学の話題でもちきりです。

「卒園式で泣いちゃった」「入学準備が大変で……」といった会話が飛び交う中、40代・独身の私は、いつも少しだけ疎外感を抱いていました。

私には祝うべき家族もいなければ、卒業させる子どももいません。
自分の選択に後悔はないはずなのに、この季節だけは、選ばなかった人生をそっと見せつけられる気がして、少しだけ居心地が悪く、どこか苦手でした。

部下からのサプライズ

そんな年度末の最終日のこと。
部下の山下さん(仮名)が、私のデスクにやってきました。
彼女は寿退社で、結婚相手の転勤のため来月には海外への引越しが決まっています。

「先輩、これ。本当にお世話になりました」

手渡されたのは、かわいらしい花束と1通の手紙。

慌ただしく過ぎ去る日々に追われていた私にとって、山下さんからの感謝の印は全くの予想外で、どこか気恥ずかしくもありました。