「この職場に恩返ししなくては」そんな思いで懸命に働き続けた結果、気がつけば都合よく使われるだけの存在になっていた──。
筆者の知人A子さんから聞いた、10年振りに社会復帰したエピソード。彼女の思いは働く女性として、とても共感できるものでした。
筆者の知人A子さんから聞いた、10年振りに社会復帰したエピソード。彼女の思いは働く女性として、とても共感できるものでした。
「恩返ししたい」その一心で
3人の子どもを育てながら家庭に専念してきた私にとって、10年振りの社会復帰は想像以上に大きな挑戦でした。近所のクリニックに採用が決まったとき、真っ先に浮かび上がったのは喜びよりも「ブランクのある私を採用してくれた」という感謝の思いだったのです。
その恩に報いたい。そんな気持ちで、患者さんへの丁寧な対応はもちろん、スタッフの間の調整や雑務まで、文字通りに身を粉にして働きました。
次第に周囲からも信頼されるようになり、職場は私にとってかけがえのない居場所になっていきました。
「便利な存在」扱い
ところが、数年が経つにつれて、職場の空気は少しずつ、でも確実に変わり始めたのです。
スタッフが退職すれば、人手不足を補うため「フル出勤」を打診される日々。それが「信頼されている証拠」だと信じ、密かに喜びを感じていたのもつかの間。新人スタッフが入れば、私の意向は置き去りにされ、シフトを一方的に削られてしまったのです。
さらには、スタッフの誰かが「土曜日は休みたい」と希望を出せば、当然のように代打の依頼が私に回ってくるのでした。
家族の優しさに甘え、自分の心と体を削りながら期待に応えた10年──。気づけば私は、職場を回すための単なる「便利屋」のような扱いを受けるようになってたのです。
院長からの信じられない一言
心身ともに限界を感じた私は、ついに退職を決意します。
10年間、このクリニックのために尽くしてきたという自負はありました。けれど、特別な労いの言葉を求めていたわけではありません。
ただ、少しの敬意や感謝を感じられたら……。