スーパーで出会った高齢女性に頼まれ、トイレまで付き添うことに。高齢化が進む今、無理のない範囲で助け合う姿勢がお互いの安心につながるかもしれないと感じた、筆者の小さな気づきを綴ります。

家族が慌てて駆け寄ってきた

女性がトイレから出てきたあと、「お一人ですか?」と尋ねてみました。
もし迷子のような状況なら、店員さんや交番に相談したほうがいいかもしれない━━そんな不安が胸に広がっていたのです。

そのタイミングで、「おばあちゃん! どこ行ってたん?」と家族らしき人が慌てて駆け寄ってきました。
買い物中に姿が見えなくなり、必死で探していたとのこと。
高齢女性が私を指さして、「この人と一緒にトイレ行ってたの!」と伝えると、ご家族が
「認知症なんです」と小さな声で教えてくださいました。

その言葉を聞いた瞬間、胸の奥で何かがぎゅっと締めつけられるような気がしました。
「怖いからついてきて」の言葉には、不安や混乱があったのかもしれません。

できる範囲の“やさしさ”でいい

家族と合流した女性は、一気に安心した様子で表情がゆるみ、手を振りながら帰っていきました。
その姿を見て、私もほっとひと安心。

高齢化が進む今、同じような場面に出会うことは、これからますます増えていく気がします。
やがて自分の親も誰かの手を借りる日が来るかもしれません。
だからこそ、気づいたときに手を差し伸べられる自分でいたいと改めて思いました。

【体験者:50代・筆者、回答時期:2025年11月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒヤリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

FTNコラムニスト:大下ユウ
歯科衛生士として長年活躍後、一般事務、そして子育てを経て再び歯科衛生士に復帰。その後、自身の経験を活かし、対人関係の仕事とは真逆の在宅ワークであるWebライターに挑戦。現在は、歯科・医療関係、占い、子育て、料理といった幅広いジャンルで、自身の経験や家族・友人へのヒアリングを通して、読者の心に響く記事を執筆中。