筆者の体験談です。
父は持病のため、2年に一度ほど入院していました。
毎日「行かなきゃ」と義務感で通っていた日々。
けれど、亡き父の本音を知ったとき──あの時間が「宝物」に変わりました。

「実は亡くなったんです」と伝えると、看護師さんは目を丸くしてこう言いました。

「お父さん無口だったから、娘さんに頼みたかったんだね。よく看てあげてたよ」
その言葉に、胸の奥がじわりと温かくなりました。

「義務」が「宝物」に変わった瞬間

父が口にしなかった「ありがとう」が、ようやく届いた気がしました。
面倒だと思いながらも通い続けた時間が、父にとっては何よりの楽しみだったのかもしれません。

「じゃあ、会社に行ってくるね」
と声をかけると視線だけ新聞からあげて頷く父。
もう会えない今も、ふとした瞬間にあの姿を思い出します。

静かな病室に差し込む朝日、新聞を広げる父の手──その何気ない風景こそが、私にとっての宝物になりました。
あの時間こそ、父と私をつないでいた「かけがえのない日常」でした。

【体験者:50代女性・筆者、回答時期:2025年10月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

FTNコラムニスト:Kiko.G
嫁姑問題をメインテーマにライター活動をスタート。社宅生活をしていた経験から、ママ友ネットワークが広がり、取材対象に。自らが離婚や病気を経験したことで、様々な悩みを持つ読者を元気づけたいと思い、自身の人脈や読者の声を取材し、記事として執筆。noteでは、糖尿病の体験記についても発信中。