穏やかな買い物の時間が一転
あの日は仕事帰りにいつものスーパーへ立ち寄り、夕飯の食材を選んでいました。
レジには3人ほど並んでいて、私はきちんと最後尾に付きました。
スマホでクーポンを探していると、背後から突然、「ちょっと! 割り込まないでくれる!?」と鋭い声が。
驚いて振り返ると、年配の女性が私を睨みつけていました。
「えっ……? 私、ちゃんと並んでいましたけど……」と答えると、「嘘つかないで! 見てた人もいたでしょ!」とさらにヒートアップ。周囲の視線が一斉に集まり、顔が一気に熱くなりました。
理不尽な非難に言葉を失う
私は確かに列の最後にいたはずです。
けれどその女性は聞く耳を持たず、「若い人はいつもズルする!」と決めつけるように怒鳴り続けます。
恥ずかしさと悔しさで声も出ず、手にしていた買い物カゴを落としそうになりました。
「どうすればいいの……」と心の中で震えていたその時、レジの店員さんが静かに声を上げました。
店員の冷静な一言が状況を変えた
「お客様、失礼ですが、防犯カメラで確認いたしますね」
若い女性店員さんが落ち着いた声で言いました。
その瞬間、店内の空気がぴたりと止まりました。
女性は「べ、別にそこまでしなくても!」と急にトーンダウン。
すると後ろに並んでいた男性客が、「この人、ちゃんと並んでましたよ」と助け舟を出してくれました。
女性は気まずそうに視線を逸らし、「勘違いだったわ」と小声でつぶやいて去っていきました。
レジを終えると店員さんが
レジを終えたあと、店員さんが私に微笑みかけてくれました。
「怖い思いをさせてしまいましたね。でも大丈夫です、きちんと見ていましたから」
その言葉に、胸の奥がじんと熱くなりました。
理不尽な怒りに晒された私を、冷静な対応で守ってくれたその姿が本当にかっこよく見えました。
あの一件以来、私は困っている人を見かけたら、見て見ぬふりをしないと決めました。
誰かの勇気に支えられた日を、今度は私が返していく番です。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2025年10月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
FTNコラムニスト:池田みのり
SNS運用代行の職を通じて、常にユーザー目線で物事を考える傍ら、子育て世代に役立つ情報の少なさを痛感。育児と仕事に奮闘するママたちに参考になる情報を発信すべく、自らの経験で得たリアルな悲喜こもごもを伝えたいとライター業をスタート。