乳がん
私は5年ほど前に乳がんであることがわかり、手術・抗がん剤・放射線治療を受けました。
当時、息子はまだ小学生でした。
不安を与えるだけだと思ったので、病気のことや治療のことはあまりくわしく話さないことに。
「病院行ってくる」「お薬飲まなくちゃ」など、私の行動だけを伝えるようにしていたのです。
治験
乳がん発見時、私のステージはⅢBでした。
症状が進行していたため、5年後の生存率は75%と言われていたのですが、先日の検査で再発や転移がないことがわかり、今後は経過観察で大丈夫ということになりました。
すると、担当の先生から新しい薬の治験の話があったのです。
さまざまな条件を聞き、一度家族に相談するということで返事は一旦保留。
夫に相談したところ「安全性が確保されているのであればOK」という答えをもらいました。
家族の一員
夫と2人で話をしていると、息子がやってきて「検査の結果どうだった?」と聞いてくれました。「大丈夫だったよ」と言うと、「なんか今話してなかった?」と怪訝な顔。
「何でもないよ」とごまかしたのですが、息子はちょっと怒った風にこう言ったのです。
「あのさぁ、きちんと話を聞かせてくれない? 俺だって家族の一員なんだから」
私が病気になった時はまだ小さかった息子。
入院中に泣きながら電話をかけて来たり、何度もLINEでメッセージを送ってきたりしていたため、不安にさせるような話はしなくても良いと思っていました。
成長
あれから5年。
息子は中学生になり、成長していたんだと感じ「じゃあ聞いてくれる?」と言って、今回の話をしました。
すると「安全で、お母さんが辛くならないなら、いいと思うよ」という、驚くほどしっかりした答えが返ってきたのです。
結論
その日の夜、夫と最終的な相談をしていると、夫が「あいつも大人になったな」と一言。
次男と言うこともあり、いつまでも小さい子に対するような態度をとっていましたが、それは息子に対して失礼だねと言う結論に至りました。
これからはきちんと話し合いをして、息子の意見も聞かなければいけないと夫婦で反省。
少し寂しい気もしますが、息子の成長を嬉しく感じた出来事でした。
【体験者:50代・筆者、回答時期:2025年10月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
FTNコラムニスト:RIE.K
国文学科を卒業しOLをしていたが、自営業の父親の病気をきっかけにトラック運転手に転職。仕事柄、多くの「ちょっと訳あり」な人の人生談に触れる。その後、結婚・出産・離婚。シングルマザーとして子どもを養うために、さまざまなパート・アルバイトの経験あり。多彩な人生経験から、あらゆる土地、職場で経験したビックリ&おもしろエピソードが多くあり、これまでの友人や知人、さらにその知り合いなどの声を集め、コラムにする専業ライターに至る。