義父の料理、おいしいけれど……
私の義父は、大の料理好きです。
わが家に来るたびに、本格的な中華鍋を振るい、スパイスを巧みに操って、プロ顔負けの絶品料理を振る舞ってくれます。
おいしい料理を自宅で味わえるのは本当にありがたいのですが、その裏で私にはひとつ、大きな悩みの種がありました。
義父の「キッチンの使い方」のせいで、後片付けがものすごく大変なのです……。
募るストレス
義父は、油でギトギトのフライパンをそのままシンクで流してしまったり、重い包丁や鍋も乱暴に置きます。
そのため、私は終始「あぁ、油はそのまま流さないで……!」「シンクに傷が!」と心の中で叫び声を上げる羽目に。
熱々の鍋の蓋を調理台に直置きし、危うく焦げ跡がつきそうになったこともありました。
何度やんわりと注意しても、「平気だよ、うちではこうしてるから」と全く聞く耳を持ちません。
義母は義父に逆らえないので、自宅では何も言われないのでしょう。
「人によってキッチンの使い方はそれぞれだ!」ということは理解しています。
しかし、毎回、義父が帰った後、油でギトギトになった排水溝や散らかった調理台を片付けるのに半日近くかかり、内心ヘトヘトでした。
「お料理弟子入り」作戦
このままでは、義父との関係もギクシャクしてしまう……。
そう考えた私は、ある日一計を案じました。
義父がキッチンに立とうとするのを見て、わざと大げさに目を輝かせながら、
「お義父さんのお料理、本当においしすぎます! 私もぜひ弟子入りさせてください!」
と、お願いしてみたのです。
すると、義父は「弟子入りだって?」と嬉しそうに笑って、「よし、じゃあ今日は一緒に作ろう!」と言ってくれました。
Win-Winの関係でキッチンも平和に
作戦は見事成功!
私は手伝うふりをしながら、義父の隣で使用済みの油を処理したり、調理器具の扱いをそれとなくサポートしました。
油を多く使えば「この方が旨味が残るんですね!」と褒めながらキッチンペーパーを差し出し、危ない使い方にはさりげなく正しい道具を手渡すなど、常に義父を立てることを忘れずに。
義父は終始ご機嫌で、以来、私を「弟子」として可愛がってくれるように。
それからは必ず「一緒に作ろう!」と誘ってくれるようになり、片付けも自然と一緒にこなす流れができたのです。
正面から注意するよりも、相手の気持ちをくすぐる一芝居が、家族関係もキッチンも円満に保つ秘訣だと実感しました。
【体験者:30代・女性主婦、回答時期:2025年8月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
FTNコラムニスト:藍沢ゆきの
元OL。出産を機に、育休取得の難しさやワーキングマザーの生き辛さに疑問を持ち、問題提起したいとライターに転身。以来恋愛や人間関係に関するコラムをこれまでに1000本以上執筆するフリーライター。日々フィールドワークやリモートインタビューで女性の人生に関する喜怒哀楽を取材。記事にしている。