バスや路面電車に乗ると、座席の横で「降ります」ボタンをじっと見つめる子どもの姿が目に入ります。窓の外を流れる風景には目もくれず、まるで宝物を守るようにボタンに視線を固定しているのです。手を伸ばすタイミングを逃さないように、体を少し前のめりにして息をひそめる子もいます。「もう押していい?」とお母さんに聞いたり、兄弟で「ぼくが先!」と奪い合ったり。その真剣さと小さな張り合いが、車内にちょっとした温かさを運んできます。