繰り返される夫のモラハラ発言
「一体誰のおかげで飯が食えると思ってるんだ!」
「お前が働かないから、うちは貧乏なんだ!」
結婚して30年、専業主婦の私に、夫は口癖のようにそんな文句をぶつけ続けてきました。
そのくせ、私が「少しでも家計の足しに」とパートに出ようとすれば、「家のことはどうするんだ」と声を荒げるのです。
結局、夫は私を家に縛り付け、経済的に支配することで優越感に浸りたかったのでしょう。
毎月渡されるギリギリの生活費を握りしめるたび、言いようのない惨めさで胸が締め付けられました。
へそくりから始まった挑戦
このままではいけない。
悔し涙を流す日々に、私はささやかな反逆を決意しました。
それは、食費や光熱費を必死に切り詰めて、月に数千円の「へそくり」を作ること。
そして、そのわずかな資金で、夫に内緒で株式投資を始めたのです。
もちろん、最初は失敗の連続。でも、それは私にとって、失いかけていた自信と尊厳を取り戻すための戦いでした。
そこで得た資金をもとに、業務委託でほそぼそと扶養範囲内で在宅ワークを始めることに。
パソコンを購入し、業務獲得に必要な知識にお金を使いました。
必死な顔でパソコンに向かいあう私を見て、夫はただ私を馬鹿にするような言葉を投げかけてきましたが、幸か不幸か私がそこで何をしているのかなど、まるで興味がないような口ぶりでした。
青ざめる夫の顔にスカッと!
私の秘密の挑戦が10年の月日を重ねた頃、夫は定年退職の日を迎えました。
「長年お疲れ様でした」と、ねぎらいの言葉をかけた直後、私が夫の前に静かに差し出したのは、1枚の紙切れ。
それを見た夫の顔が、みるみるうちに青ざめていくのが分かりました。
在宅ワークとへそくりで積み立てた貯金額が印字されている通帳と共に、私は夫に離婚届を突き付けたのでした。
ここから始まる私の人生
「これで、あなたに文句を言われずに済むわね」
私はそう夫に告げ、記入済みの離婚届をテーブルに置きました。
あれほど口が達者だった夫は、反論の言葉ひとつも返せず、唖然とした様子。
自分が見下し続けてきた妻が、自分の知らないところでしっかりと財産を気づいていた事実を突きつけられ、現実が受け入れられなかったのでしょう。
経済的な自立は、何よりも強いお守りになります。
誰かに依存しなければ生きていけないと蔑まれていた私が、自分の人生のハンドルをこの手で力強く握り返した、最高の瞬間でした。
【体験者:60代・女性主婦、回答時期:2025年6月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
FTNコラムニスト:藍沢ゆきの
元OL。出産を機に、育休取得の難しさやワーキングマザーの生き辛さに疑問を持ち、問題提起したいとライターに転身。以来恋愛や人間関係に関するコラムをこれまでに1000本以上執筆するフリーライター。日々フィールドワークやリモートインタビューで女性の人生に関する喜怒哀楽を取材。記事にしている。